本日取り上げるのはこのニュース。
 埼玉新聞3月22日付。

反対…男女別学の埼玉県立高校“共学化”しないで「85・9%」 浦和高校の在校生ら、県教委に直接熱意を伝える「伝統を奪わないで」「定員割れなどのやむを得ない理由以外で、別学廃止は選択の権利を侵害」

 相変わらず長ったらしい埼玉新聞の見出しである。
 が、ご本人たちはこれが今風と思っているようだし、こういうのが好きという人もいるので、いいだろう。

 県教委はすでに多くの別学校で、卒業生や保護者を対象とした意見聴取を行っているが、今度は現役高校生(在校生)への聞き取りを行おうというものである。
 しかし、男子校がいいと思って入学した生徒たちに聞けば、このような答えになることははじめから分かっていることだ。
 熊谷高校でやろうが春日部高校でやろうが、在校生の意見は同じだろう。
 浦和一女でやっても、熊谷女子、川越女子でやっても同じこと。

 発端については以前にも書いたが、1件の苦情である。
 県条例に基づき設置された埼玉県男女共同参画苦情処理委員がこれを調査し、県教育委員会に勧告した。

 寄せられた苦情は「埼玉県立の男子高校が女子が女子であることを理由に入学を拒んでいる。女子の入学は当然認めるべきであり、女子差別撤廃条約に違反している事態は是正されるべきである」というものだ。
 これが原文かつ全文であるとしたら、ちょっとお粗末である。
 「男子高校が女子が女子であることを理由に入学を拒んでいる」というが、それぞれの学校は条例・規則に基づいた募集をしているだけであって、拒んでいるという表現は妥当ではない。
 苦情子は男子校のことのみを言っているが、その伝で言えば女子校もまた「男子が男子であることを理由に入学を拒んでいる」のであるが、それについての言及はない。女子校は認めるべきということなのか。
 また、「女子差別撤廃条約に違反している」というが条約のどの部分に違反しているのかについても具体的が記述もない。

 おそらく、もっと論理だてての苦情だと思うが、苦情は1年間でたった1件しかないのだから、原文を全文公開してもらいたいものだ。

 さて、それに対する苦情処理委員(3名)の勧告(趣旨)。
 「「男女別学」は女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約上、男女別学であることだけでは条約違反とはされていないものの「男女共学」での教育が奨励されており、男女の役割についての定型化された概念の撤廃が求められている。埼玉県立高校の男女別学校における管理職や教職員の格差における問題が浮き彫りになっていることは明らかであり、別紙で提言した施策がなされるとともに、埼玉県立高校において、共学化が早期に実現されるべきである。」

 前半で、「男女別学であることだけでは条約違反とはされていないものの」と述べている。
 苦情子の主張はここで退けられている。
 条約に違反しているという苦情に対し、条約には違反していないと述べているのであるから、話はここで終わりである。

 が、苦情処理委員はよほど暇なのか、話をどんどん広げて行く。
 「男女共学での教育が奨励されており」とあるが、「女子差別撤廃条約(女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約)」のどこに男女共学を奨励する文言があるのか。

 女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約

 そして、話はさらに飛躍して行く。
 「埼玉県立高校の男女別学校における管理職や教職員の格差における問題が浮き彫りになっていることは明らか」。
 こんな苦情あったか。
 だから、原文・全文を公開して欲しいと言っているのだ。

 女性管理職が少ないのは、共学・別学とはまったく次元の異なる問題である。
 苦情にも無い(と思われる)採用・人事の問題まで持ち出して、共学化早期実現という結論に導こうとするから話がおかしくなる。

 「つぶやき」同然のクレームをここまで大きな問題に発展させたのは想像力豊かな苦情処理委員の皆さんではないか。
 
 埼玉県男女共同参画苦情処理委員による勧告書

 なお、私自身は男子校出身であり、受けた教育に満足している。
 学校に対する誇りも持っている。
 ただ、「この先、何十年という単位で考えれば、流れは疑いもなく共学化だ。男子校の浦高も、女子校の浦和一女も消滅するだろう。残念ながら年寄りの私は、その事実を生きて確認できないが、間違いなくそうなる。もし女子の特性を生かした教育や、男子の特性を生かした教育というものがあるなら、その中で教育体制や教育内容を編成すればよかろう」(2022年11月21日付、本ブログ記事より)と考えている。
 苦情子とは立場や視点はまったく異なるが、将来の方向性という点では同じだ。