2日前(7月3日)、開智高校の塾対象説明会に行ってきたので、その様子をお伝えしよう。
 
 開智高校は開智学園グループに属する学校の一つである。
 埼玉県内には、「開智小学校」、「開智中学高等学校」、「開智高等学校」、「開智未来中学高等学校」、それに今春開校した「開智所沢小学校・中等教育学校」がある。
 また、茨城県守谷に「開智望小学校・中等教育学校」、東京に「開智日本橋学園中学高等学校」、千葉県柏市に「開智国際大学」がある。
 
 年配の方は「埼玉第一高校」の名をご記憶だろう。
 学校法人三友学園「埼玉第一高校」が開校した1983年(昭和58年)が学校としての始まりである。
 その後、平成に入り法人名、学校名ともに「開智」と変更され現在に至っている。

 開智高校は、内部的にも外部的にも「開智高等部」と呼ばれることがある。
 中高一貫の「開智中学・高等学校」と区別するためである。

 埼玉の私立中高一貫校は、高校からの入学者を受け入れている学校がほとんどである。
 その場合、高校からの入学者を「高入生」、中学からの入学者を「一貫生」などと呼ぶ。
 多くの学校では、「高入生」と「一貫生」が混じりあうことはなく、クラスは別々である。
 「一貫生」は先取り学習をしていることが多く、一緒にできないという事情もある。
 ただ、行事や部活に関しては一体となって行われる。
 「高入生」であろうが、「一貫生」であろうが、同じ「〇〇高校の一員」なのである。

 だが開智の場合は、「一貫生」の開智と、「高入生」の開智は、事実上、別の学校として運営されている。
 だから、校長もそれぞれにいる。
 校舎はまったく別で、教える先生たちも別々。
 生徒会も別々にある。
 文化祭、体育祭といった学校行事もまったく別個に行われる。

 ということで、今回行ってきたのは「高入生」だけで構成される「開智高等部」の説明会である。
 塾の先生方には今さら説明の要はないが、公立の先生方のために少しばかり説明した。

◆開智に足りないのは「徹底」
 説明会冒頭、青木徹理事長の挨拶があった。
 青木理事長は現在、埼玉県私立中学高等学校協会の会長でもある。

 最近、同校先生方と共に聖光学園を視察訪問したそうだ。
 今春東大合格者を100人の大台に乗せ、開成に次ぐ第2位に躍進した神奈川の私立男子校だ。
 開智の東大合格者は7人(一貫部7人、高等部0人)であるから、まったく比較にもならないわけだが、とにかくトップ校に学ぼうということで行ってきた。
 
 教員採用の仕方や待遇、学費、クラス編成、カリキュラム、教材など、さまざまな点で開智との違いがあった。
 まあ私立学校ならそうだろう。
 公立なら地域が違ってもそれほど大きな差はないが、隣の学校とだって全然違うのが私立というものだ。

 しかし、違いがある一方、共通点も多々あると感じたという。
 また、むしろ開智の方が恵まれていると感じた点もあったという。
 だが、進学結果にはとてつもなく大きな開きがある。
 その差はどこから生じているのか。

 青木理事長は「徹底の差」であると言う。
 「開智には徹底さが足りていない」。
 同じことをやっても「徹底の差」が結果を左右する。
 今まで行ってきたこと、現在行っていること、これらをさらに徹底させればおのずから結果がついてくるだろう。
 そんなお話だった。

◆単願の生徒は伸びる
 青木理事長は、募集に関する話にも若干触れた。
 単願で入ってきた生徒は伸びている(伸ばせている)。
 これからの課題は併願で入ってきた生徒を伸ばすことであると言われた。

 私見だが、単願で入ってくる生徒の質がどこの学校でも変わってきていると思う。
 多くの県内私立は安定した生徒募集を行うため、一定数を単願で確保する政策をとってきた。
 そのため成績基準(いわゆる確約基準)も併願よりかなり低く設定してきた。

 だが、それでも受験生側の公立志向は根強く、なかなか思うように単願を集めることができなかった。
 しかし、私立の教育内容はどんどん上がってきた。大学進学実績も急上昇してきた。
 加えて学費面での公私間格差も縮小してきた。

 こうなると、公立は無理そうだから早めに諦めてというのではなく、最初から私立を第一希望とする生徒が徐々に増えてきた。
 結果、単願だけで定員の80%、90%が埋まってしまう学校さえある。
 もちろん単願で決めてしまえば早々に受験勉強から解放されるわけだが、それは昔からあったことだから、近年の単願志向の高まりの説明にはならない。

 第一志望としての単願が増えている。
 そう考えれば、「単願で入ってきた生徒は伸びる」というのも納得できる。
 一番入りたかった学校に入れたのだから、入ってからも頑張れる。

 むろん公立を落ちて併願で入ってきた生徒がダメだというわけではない。
 おそらく紙一重の差であっただろうから実力は十分ある。気持ちの切り替えさえ上手く行けばこちらも伸びる。

 いずれにしても、平成初期から中盤にかけて確立された県内私立の募集政策は、そろそろ賞味期限を迎えており、令和型の新たな募集政策が求められているということだろう。