超有名証券会社の若手が飛び込み営業にやって来た。
ネット全盛の時代でも、まだこんなことしてるんだ。
普通は門前払いだ。
「いま忙しい」とは言わない。
そんなことを言うと、「いつだったら時間が取れるかと」食い下がってくる者もいるからだ。
だから、「そっちには話したいことがあるかもしれないが、こっちには聞きたいことは何もない。お互い時間の無駄だから次を当たってくれ。ご苦労さん」で終了。
しかし、今日はめずらしく時間があった。
と言うか、集中が必要な作業を終えて一休みというタイミングだったので、「株にも投資にも興味はないが10分以内なら話を聞いてもいい」と招き入れた。
入社2年目だという。
1年もっただけでも立派だ。
しかし、さいたま支店勤務だからな。入社した瞬間から出世コース外れている。
ラグビーをやっていたとかで、いい体格をしている。昔ほどじゃないが、やはり体育会系が多いのか。まあ、そんなに頭を使う仕事でもないし、バリバリ文系でオーケー。社内・社外におけるコミュニケーション能力の方が重要だからそうなる。
大学は何と教育学部で教員免許を持っているという。
となると、さあここからは埼玉県教育委員会になり代わってリクルートだ。
証券マンなんてやめて今すぐ小学校の先生になれ。
会社は10年後、あなたを必要としていない。
なぜ先生にならなかった。
「先生も考えたのですが、まだ人間として未熟なので、社会勉強をしてからのほうがいいと思いました」
なにを言う。
人間は永遠に未熟なのであり、完成などしないのだ。
未完のままこの世を去るのだ。
大学出たての若造が未熟なのは当たり前だ。
教育は共育だとも言われている。子供たちと共に教員も成長する。そういう仕事なのだ。
今の仕事だって、お客に教えられたり、お客に鍛えられる部分もあるだろう。それと同じで、先生というのは子供たちに教えられ、子供たちに鍛えられて成長するのだ。
「教員、つとまりますか」
証券会社ほどブラックじゃないから大丈夫だ。
きついノルマがあるわけじゃないし、毎日のように上司に詰められることもない。
スポーツマンだし、すぐに子供たちの人気者だ。先生というのは子供たちと遊ぶのも仕事のうちなんだぜ。いい職業だろ。
というわけで、商品説明など一切聞かず、一刻も早く教員になれと勧める。
これで転職を決意することはないだろうが、株のカの字も、投資のトの字も一切言わせないジジイのところに再び営業をかけてくることはないだろう。
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