浦和高校・浦高祭の門。今年の入場門は日光東照宮の陽明門をモチーフとしたもので、その見事な出来栄えがネット上で話題となっている。
文化祭で「最高難度」の陽明門を制作 「本物に近づけたい」130人が1年がかり(高校生新聞)
浦高祭が9月12・13日。その1週間前の開催された川越高校の「くすのき祭」でも、例年通り巨大な入場門が来場者を迎えた。こちらはドイツのフラウエン教会をモチーフとしたものだ。
両校とも、文化祭のために巨大な門を制作することが伝統となっている。
川越高校には、もう一つの目玉であるウォーターボーイズ(水泳部による男子シンクロ)もある。門とウォーターボーイズ。この二つを目当てに、くすのき祭を訪れる人も少なくないだろう。
さて、ここからが今日の本題だ。
両校の門やウォーターボーイズは、学校広報やブランド戦略、募集マーケティングの視点から見ても、非常に興味深い存在である。
ただ、これを、「さすがは伝統校だ」「トップ進学校だから、あれだけのことができるのだ」で終わらせてしまっては、他校にとって何の参考にもならない。
もちろん同じことはできないし、同じことをする必要もない。
大切なのは、両校が何を作っているかではなく、そこから学校広報やブランド戦略のどのような原理を学び、自校の活動に取り入れるかである。
◆学校の魅力は、言葉よりも実物で伝わる
学校説明会では、「自主性を重んじる」「主体性を育む」「仲間と協力する力を養う」といった言葉がよく使われる。
しかし、そうした教育方針は、言葉で説明するだけでは中学生や保護者になかなか伝わらない。
その点、浦和・川越の巨大な門は分かりやすい。
生徒たちが長い時間をかけ、設計し、制作し、仲間と協力して一つの作品を完成させた。その実物を見れば、生徒たちが何に挑戦し、どのような力を発揮しているかが伝わってくる。
学校が自ら「本校の生徒は素晴らしい」と宣伝するよりも、生徒たちの活動そのものを見てもらう方が、はるかに説得力を持つ場合がある。
では、巨大な門もウォーターボーイズもない学校はどうすればよいか。
別のものを見せればよい。
例えば、工業高校なら生徒が制作した機械やロボット、農業高校なら栽培した農作物や加工品、商業高校なら生徒が企画・開発した商品などが考えられる。(これは実際に行われている)
普通科高校でも、探究活動の成果発表、文化部の作品、地域と連携した活動など、具体的に見せられるものはあるはずだ。
重要なのは、その活動を通して、どのような学校生活が送れるのか、どのような成長が期待できるのかを伝えることである。
説明する広報から、具体的な活動と成果で証明する広報へ。
これが第一のポイントだ。
◆ブランドは一朝一夕には作れない
浦和高校の門も、川越高校の門やウォーターボーイズも、今年突然始まった企画ではない。
長年にわたって継続され、毎年新しい作品や演技が生み出されてきた。
その積み重ねによって、「浦高祭といえば門」「くすのき祭といえば門とウォーターボーイズ」というイメージが形成されている。
これは学校のブランド資産である。
ブランドというと、校名や校章、制服、あるいは進学実績などを思い浮かべるかもしれない。しかし、学校の中で長年続けられてきた活動や行事も、他校との違いを認識してもらうための大切な資産となる。
他校が考えるべきなのは、自校にも継続してきた活動がないかということだ。
毎年開催している音楽会でもよい。地域住民が楽しみにしている行事でもよい。卒業生が後輩たちを支援する活動でもよい。
学校関係者にとっては当たり前になっていて、特に珍しいとも思わなくなっていることが、外部の人々には新鮮で魅力的に映る場合がある。
そうした活動を掘り起こし、継続的に発信していく。
もちろん、長く続いているというだけではブランドにはならない。学校内外の人々に知られ、その学校ならではの価値として認識されることが必要だ。
また、伝統を守ることと、前年と同じことを繰り返すことは同義ではない。
両校の門は、毎年モチーフが変わる。川越高校のウォーターボーイズも、新しい世代の生徒たちが新しい演技に挑戦する。
変わらない伝統の中に、毎年新しい挑戦がある。
他校も、自校の活動を単に続けるだけでなく、少しずつ進化させていくことが大切だろう。
◆まずは見込み客との接点を作る
マーケティングの視点から見れば、浦和・川越の門は強力な集客装置でもある。
今年はどんな門ができたのか。写真で見たあの門を実際に見てみたい。そんな理由から文化祭を訪れる人もいるだろう。
川越高校のウォーターボーイズも、文化祭を訪れる動機の一つになっている。
ここで注目したいのは、門やウォーターボーイズに興味を持った人が、必ずしも最初からその学校への進学を希望しているとは限らないという点だ。
特に、中学1・2年生や小学生の場合、まだ具体的な志望校を決めていない子供が多い。
しかし、文化祭で高校生たちの活動を目の当たりにすることで、「この学校は面白そうだ」「自分もこんなことをやってみたい」と思うかもしれない。
そこから学校への関心が生まれ、やがて進学先の候補になっていく可能性がある。
つまり、文化祭の門は、入学を検討している受験生を呼び込むだけでなく、まだ学校選びを始めていない子供たちとの接点を作る役割も果たしているわけだ。
他校も、この点を意識したい。
文化祭や学校公開を中学3年生向けの募集イベントとしてだけ捉えるのではなく、中学1・2年生や小学生にも学校を知ってもらう機会として活用する。
そして、一度来校した子供たちとの関係を、その場限りで終わらせない。
例えば、文化祭で人気を集めた企画について、その後の活動を学校ホームページやSNSで紹介する。興味を持った中学生が次の学校説明会や体験活動に参加できるよう、情報を届ける。
これなら、巨大な門がなくても実行できる。
目の前の中学3年生を集めることも大切だが、数年先の志願者を育てるという長期的な視点も必要なのである。
※本日ここまで。後編に続く。

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