令和9年度、埼玉県公私立高校入試。
 今月中には、第1回進路希望状況調査の集計結果が発表される。
 受験生・保護者の最大の関心は、やはり倍率だろう。
 自分が希望している学校は何倍なのか。昨年より上がったのか下がったのか。
 気になるのはそこだ。

 一方、高校や中学校の先生方は、個々の学校の倍率だけではなく、もう少し広い視点から数字を見ることになるだろう。
 授業料無償化や公立入試改革の影響は出ているのかどうか。公立志向は強まっているのか、弱まっているのか。地域による違いはあるのか。共学、別学、市立・県立といった学校の属性によって動きに変化はあるのか、等々。
 つまり、高校入試市場全体がどのように変化し、どちらの方向へ向かおうとしているのかを見るわけである。
 が、そのあたりは結果が出てからじっくり考えるとして、今日は、倍率発表後に行われる学校説明会について考えてみる。

◆季節が変われば説明会も変わる
 「季節が変われば説明会も変わる」という話は先月(9月)にも書いた。
 春から夏は、「出会うための説明会」。
 夏から初秋は、「知ってもらうための説明会」。
 そして9月下旬からは、「比較し、確認し、選んでもらうための説明会」。
 そんな整理をした。

 では、第1回進路希望状況調査の結果が出た後、11月の説明会はどうなるか。
 これはもう、答えは決まっている。
 高校側からすれば、「決めてもらうための説明会」である。

◆なぜ決められないのか
 11月になって説明会に足を運んでくれる受験生は、その学校にかなりの関心を持っている。
 どんな学校か、ちょっと様子を見に行ってみるか、そんな段階ではなく、ホームページは見ているだろうし、パンフレットも持っているだろうし、文化祭や夏の説明会にも来ているかもしれない。
 それでも、まだ決められない。
 この時期、動いているのはそういう受験生たちだ。
 
 では、なぜ決められないのか。
 ここを考えることが11月説明会の出発点になる。

 中学校での成績に不安があるのか。
 学力検査で必要な点数を取れる自信がないのか。
 倍率を見て怖くなったのか。
 あるいは、令和9年度入試から全員に課される面接に不安を感じているのか。

 ほかにも、校風になじめるか、授業についていけるか、部活動と勉強を両立できるか、通学を3年間続けられるか。
 迷う理由は一人ひとり違う。
 だが、共通しているのは、何か一つ、あるいはいくつかの不安材料が、最後の決断を妨げているということだ。

◆学校説明だけでは弱い
 だから11月になって、「本校の教育方針は……」「本校にはこんな行事が……」「部活動は……」と、春や夏と同じ説明を繰り返すだけでは弱い。
 もちろん初参加者もいるだろうから基本情報は必要である。
 だが、それだけならホームページやパンフレットを見れば分かる。

 この時期にわざわざ学校まで足を運ぶ受験生が求めているのは、情報の量ではなく、決断するための材料である。
 「今の成績でも、ここから努力すれば十分可能性があります」
 「面接では特別なことを言う必要はありません。自分の考えを自分の言葉で話してください」
 「倍率はこれから動きます。今出ている数字だけで志望校を変える必要はありません」
 (もちろん、合格保証などはできないが)

 大事なのは、正確な情報を示した上で、「では、これから何をすればよいか」を具体的に伝えることだ。
 受験生が欲しいのは、おそらくそこだろう。

◆不安をゼロにはできない
 そもそも入試を前にして不安がまったくない中学3年生など、いないだろう。
 勉強しても不安。
 模試で良い結果が出ても不安。
 倍率を見ても不安。

 だから学校側が、すべての不安を消してあげようと考える必要はない。
 そんなことはできない。

 じゃあ、どうする。
 
 大事なのは、不安を抱えながらも一歩前に進めるようにしてあげることだ。
 説明会に来る前よりも、帰るときのほうが、ほんの少し前を向いている。
 それで十分だ。

 学校広報や生徒募集では、どうしても「学校の魅力を伝える」「志願者を増やす」といった学校側の論理が前面に出やすい。
 しかし11月以降は、少し視点を変えた方がいい。

◆説明会だが説明は要らない
 説明会という集まりなのだから、説明はする。
 だが、説明すること自体が目的ではない。
 迷える受験生に、少しの自信を与える。
 不安にさいなまれる受験生に、少しの安心を与える。

 11月の説明会は、「学校を説明する会」ではない。
 「受験生に自信と勇気を与える会」である。
 「受験生の決定を後押ししてあげる会」である。
 と、そのくらいの気持ちで臨んでみたらという話だ。