通信制高校希望者が増えている。今年10月に行われた埼玉県の進路希望調査では、前年同期から305人増え1612人となった。割合では2.1%から2.6%と0.5ポイント増だ。
むろん全日制希望者5万6229人と比べればケタが違うわけだが、割合で見ると全日制が0.7ポイント減であり、定時制などはほぼ変化無しなので、全日制より通信制という選択をする中学生が増えているのは確かだ。
これが一過性のものなのか、あるいは一つのトレンドなのか、注意深く見守って行く必要がありそうだ。
個人的には、今後さらに増えるのではないかと予想するが、あくまでも直感的なものなので、もう少しデータを集めてから分析してみよう。
以上は前フリで、今日のお題は、二重苦に喘いでいる高校たち。
ここで二重苦というのは、募集で人が集まらず苦労している上に、途中でやめて行く生徒も多く苦労しているという意味だ。
元々入学者が少ないところにもってきて、途中でやめてしまう生徒も多いので、卒業人数はさらに少なくなる。
◆入学者に対し、卒業者が少な過ぎる学校
「卒業者数-入学者数」
入学者が全員その学校を卒業すれば、「卒業者数=入学者」であるから、この数字は「0」となる。
厳密には、一家転住などによる転入や転出なども考慮しなければならないが、さほど多くないと思われるので、「卒業者数<入学者」である場合は、中途退学したか進路変更したかということになる。
令和2年3月の学校ごと卒業者数は、今のところ最終確定データが出ていない。
ただし、「学校の活性化・特色化方針」というところに、各学校が進路先別の人数を表示しているので大学何人、短大何人、専門学校何人と足し算して行けばこの春の(令和2年3月の)その学校の卒業者数が推定できる。
一方、この春の卒業者は、平成29年4月の入学者である。この数字は、「平成29年度高等学校入学状況調査」で確かめられる。
よって、学校ごとにこの差異を見ていけば、入学者のうち、どれくらいがその学校を卒業したかが推定できる。
つまり非卒業率推定ということである。
全日制高校について、「(入学者-卒業者)÷入学者」を調べてみた。
(入学者-卒業者)、すなわち非卒業者が30%を超える学校が1校、20%を超える学校が6校あった。
五十音順に、上尾橘、岩槻北陵、児玉、新座、鳩山、飯能南(スポーツ)、妻沼である。
15%を超える学校は6校あった。
五十音順に、越生、川越初雁、北本、三郷、宮代、和光である。
専門学科を加えるともっと増えるが、今回は普通科限定だ。
上記のうち、岩槻北陵、越生、川越初雁、児玉、鳩山、飯能南(スポーツ)、妻沼は3年連続欠員募集(補充)を行っている。
前述したように、元々入学者が少ない学校は、同時に途中でやめて行く生徒が多い学校でもあるのだ。
ここが辛いところだ。
◆やめる生徒が多い学校って、どうなの
募集で集まらず、その上途中でやめて行く生徒が多い学校を積極的に勧める人は少ないと思う。
ただ、私は仕事上のこともあって、そういう学校にも行くが、別に授業が成立していないとか、物がやたら壊されているとか、先生と生徒が喧嘩しているとか、そういうのはない。
たしかにキレやすい生徒もいるし、そのままキャバクラ行けよみたいな女子もいないわけじゃないが、むしろおとなしい生徒が多いという印象だ。
やめて行く生徒は1年の早い段階でやめてしまっているというのもあるかもしれない。なにしろ入学式さえ来ない生徒がいくらでもいるのだ。
こんな言い方をしては失礼だが、「生き残り組」は強いのである。
かれらは、なんだかんだいいながら学校生活に適応し、3年後にはちゃんと卒業し大学に進んだり就職したりするのである。
だから、やめて行く学校がダメな学校という決めつけはするべきではなく、ましてやそこに在籍する生徒やそこを卒業した生徒を卑下するような態度や言動は、教育者としては、してはならないのである。
世間がどう言おうと、教育に関わる者はそのような差別をしてはいけない。
◆いい出会いはどこにでもある
世間にありがちな誤解は、生徒のレベルが低い学校は先生のレベルも低いのではないかというものがある。
とんでもない。
今朝もある先生から公開授業参観のお誘いメールが入ったが、その先生は3月まで所沢北にいて、4月から川越初雁にいる。実名は差し控えるが(差し控えるを首相みたいに使ってみたかった)、その先生は将来を嘱望されており、私も実際に何度か授業を見て、いずれは「神」と呼ばれる領域に達すのではないかと期待しているのだ。そういう先生が、進学校から問題の多い学校に異動するのはごく普通のことで、別に指導力がないから問題の多い学校へ、とはならないのである。
その先生からのメールには、「学力は前任校に及ばないが、学びに向かおうという姿勢には感動させられる」と書いてあった。
いい出会いはどこにでもあるよ。
◆見ていてくれる人がいる幸せ
上尾橘高校のHPを見ていたら、「記念すべき日」という校長先生(鈴木健先生)のブログが目に入った。
「上尾橘高校、校長先生のブログ」
記念すべきって、何が記念すべきなんだ。
そう思って読んでみると、女子バレーが地区大会の1回戦に勝って、これが久しぶりのことで嬉しい、みんなよくやったという記事だったんだが、この姿勢というかこの感覚、私も忘れてたね。
たかが地区大会1回戦だよ。
でも、生徒は喜んだと思うよ。見てくれてたんだ、ってね。
そうそう、これを書いてて思い出した。
元埼玉県教育長で元浦和高校の校長だった関根郁夫先生。塾の先生方には、開智未来前校長の関根均先生の実兄と言った方が分かりやすいかな。
その関根郁夫先生が志木高校校長だったころ、生徒にハガキを書きまくっていた。成績がちょっと上がったとか、誰かに親切にしたとか、近所の人に褒められたとか、そんなことなんだが、それをいちいち取り上げて、表彰状を作り、自宅に郵送した。
なぜ自宅に?
家族が最初に見るかもしれないし、そうでない場合でも生徒はさりげなく食卓かなんかに置いておくんだって。
先生はプリンターをいくつ壊したかと言ってたな。
この話は、昔「よみうり進学メディア」に書いた覚えがある。
校長でも、担任でも、部活顧問でも、見ていてくれる人がいるっていうのは幸せなことだね。
今の自分の立場で出来ることは少ないが、いろいろ問題あり過ぎて、心を病んだり体を壊したりする先生もいるようだから、何とか応援しなきゃいけない。
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