受験生諸君、今すぐ努力という言葉を捨て去ろう。
  
 努力は結果を表す言葉だ。
 すべてが終わった後に使う言葉であって、やる前に用いる言葉ではない。
 ましてや目標にすべきものではない。

 努力とは、結果を出した人への賞賛の言葉である。
 「合格はキミの努力の賜物だ。やはり努力は裏切らない」
 という具合に。

 努力とはまた、結果を出せなかった人への慰めの言葉である。
 「キミは十分努力した。ただ運が悪かった」
 というように。

 もう一度言う。
 努力とは、事後に用いる言葉である。
 努力とは、結果に対して他人が用いる言葉である。

 よって。
 今日からあなたは努力などという言葉を口に出してはいけない。
 思ってもいけない。
 ついでに言うが、「頑張る」もほぼ同義であるから、これも禁止だ。

 小さい頃から「頑張ります」「努力します」が口癖になっているから、つい使ってしまうと思うが、気がついたら打ち消そう。
 いかん、これはやる前に言ってはいけなかったのだ、自分が自分に対して使ってはいけなかったのだ、と。

 私はこのことに気がつかず、大人になってからも何千回、何万回と使ってしまった。
 今も時々使ってしまう。
 ただ、昔と違うのは、それがNGワードだという自覚があることだ。

 ちなみに、大人のビジネスの世界では「努力します」は何もしないということである。
 相手に何かをお願いして、「分かりました、努力します」と言われたら、興味がないんだな、やる気がないんだなと解釈するのが常識だ。
 また、「努力目標」という言い方もある。
 できそうもないことや、大して本気ではないことを目標にする場合、目標の前に努力をつけるのが大人のビジネスの世界でのお約束だ。
 どうだ。「努力」がいかに安っぽい言葉であるかが分かっただろう。

 安っぽい言葉を使っていると、人生まで安っぽいものになるぞ。
 だから今日からあなたは努力しない人になりなさい。
 より正確には「努力」という言葉を口にしない人になりなさい。

 では、これからは何と言えばいいですか?
 
 別に解説者じゃないんだから、自分の行動をいちいち言葉で説明する必要はないと思うが、強いていえば「結果を出します」あたりかな。
 結果を出すと、周りの人は「あなたは努力の人だ」と誉めてくれるよ。別に努力なんてした覚えないんだけど。
 でもまあ、せっかくそう言ってくれるんだから、有難く受け取っておこう。

 以上、本日のお題は「努力」。
 努力をするなと言いながら、結局は努力を迫ってるんじゃねえの?
 バレたか。