受験生向け新聞に「Q&A」コーナーがあって、そこに生徒や保護者から質問が寄せられてくる。質問内容は毎年毎回同じようなものだが、同じ回答というわけにもいかない。仕方ないから、何とかそれらしい回答をひねり出す。

 たとえば、こんなやつ。
 質問。
 子供が勉強する掛け声はありますか? 保護者より

 回答。
 あのね。私はあなたの子供の性格も学力も、何も知らないの。もちろん、あなたのことも。
 あなたが育てた子でしょう。育てたあなたが分かんないのに、なんで他人の私が分かるのよ。
 と、言ってしまっては身も蓋もないし、それに私は原稿料もらってるからね。どんな球が飛んできても打ち返さなきゃならないの。見逃し三振は認められないのですよ。

 でね。要するに子供が勉強するようになれば、あなたは満足なわけだね。
 自分の満足のために子供に勉強させるのはどうかと思うけど、それには「私は子供の将来を思って言ってるんです」という反論が用意されているはずだから、とりあえずここは、自分のためじゃなく、あくまでも子供のため、ってことにして次に行くよ。

 じゃあ、勉強するとどんな将来が待ってるの?
 逆に勉強しないと子供の将来はどうなるの?
 そこをあなたなりにシミュレーションしてみてよ。思いっきりイマジネーション働かせて。

 高校ではどうか、大学ではどうか。
 就職して社会人になるとどうか。
 結婚して子供が出来たらどうか。
 その子供が高校受験生になったらどうか。

 あれっ?
 いつの間にか、あなたの人生の振り返りみたいになってるね。まあいいか。
 で、ここまでは自分でも経験してるから想像力も働くよね。

 でも考えてみてよ。
 今あなたは40代だと思うけど、人生あと半分残ってるわけ。
 ここから先は未知の世界なわけだけど、勉強する人生と勉強しない人生とでは、50代、60代、70代、80代ではどう変わってくるの?
 あなた、「子供の将来を思って」、って言いましたよね。
 まさか子供の将来が半年後に終わるわけないですよね。
 だったら、遠い未来まで考えましょうよ。

 子供の将来をあれこれ考える。
 それも、何十年先まで、自分がこの世からいなくなってからのことまで考える。
 たぶん、あなたの親もそうだったんだろうね。

 で、話を戻すけど、子供の将来に関わる言葉を他人から借りてきちゃいけない。
 そりゃあ、相談してくれるのは有難いし、参考にしてくれてもいいけど、これだけは自分で見つけないとね。

 人間、たいていのことは自分の中に答えを持っているものですよ。
 それを探し出せばいい。
 答えが無いはずはない。
 考えたことないから、ずっとずっと奥の方にあって見つけずらいだけ。
 
 落ち着いて深く考えてると、あら不思議、言葉が出てくるんですよね。
 それを子供にぶつけてやりましょう。
 お年頃なんで、無視したり、反撃してきたりするかもしれないけど、それは仕方ない。あなたも一度は通って来た道なわけだし。

 で、結論。
 借り物の言葉はすぐバレる。
 自分の思いは自分の言葉でしか伝わらない。

 以上、回答終わり。
 さて、今年はこの答えでいいとして、来年も同じ質問が来るに決まっているが、その時はどう答えようか。
 断っておくが、質問は実際にあったものだが、新聞の回答はこれとは別だ。ここで書いた回答はあくまでもブログ用だ。