昨日、12月1日から埼玉県私立中高の出願が始まっている。もうそんな時期なんだ。
 このブログは、「埼玉県中心の」と最初からことわっているから、他県の教育関係者に読まれているとは思えないが、念のため言っておくと、埼玉県私立高校受験者にとって、出願はそのまま合格を意味する。

 もちろん、全員ではないが、事前に学校側と十分な擦り合わせをし、かつ「単願」という形で出願した場合は、よほどのことがない限り不合格とならないから、「出願≒合格」である。
 また、公立高校を第一希望とし、「併願」という形で出願した場合でも、事前に学校側と話し合っておけば、まず落とされることはないから、この場合も「出願≒合格」である。

 話し合いとか擦り合わせと言えば聞こえは良いが、これは一種の「密約」である。
 しかし、これではあまりにも不正感が漂い過ぎるので、受験生・保護者側は「確約」と呼んでいる。「密約」であるから、その内容をわざわざ書面に残したりはしないが、高校側が一方的に約束を破ることはないので、そこは心配しなくていい。

 こうしたシステムは、受験生・保護者側からすれば大変有難いものである。
 受けてみないと結果が分からないのが入学試験なのだが、ほぼ合格が保障された学校だけを受けるのが、このシステムであるから利用しない手はない。
 学校側としても、入学者数が早期に、かつ相当程度確実に読めるこのシステムの恩恵は計り知れないものがある。

 問題は、他県関係者から見たら「謎」のシステムである埼玉方式がいつまで続くかということだ。

 謎の埼玉方式は、中学入試の盛り上がりによって崩壊する可能性がある。
 中高一貫希望者が増え、学力優秀な小学生がこぞって中学入試を受けるようになれば、その時点で3年後の高校生を確保することになるから、高校入試はオマケのような存在になる。
 その場合は、ガチな試験をやって、1クラスか2クラス分ぐらいを取ればいい。何なら、それすらもせず中学入試のみだって構わない。

 まあ、現状は、決して多くはない定員さえ確保できていない中学校が多いから、夢のような話なのであるが、生徒たちに夢を持てと常に言い聞かせている先生方なのであるから、ご自身も壮大な夢を描いて欲しい。

 崩壊シナリオのもう一つは、私立希望者が爆発的に増えた場合だ。
 かなり雑な計算になるが、仮に県内中学生が6万人いたとして、そのうちの2万人が県内私立のいずれかを第1希望ないし、第2・第3希望にしたとする。
「私立Aに行きたいが、ダメなら私立Bでも私立Cでも、とにかく私立に行きたい」という状態だ。
 そうなると、私立側としてはキャパオーバーになるから、ガチな試験による選抜を行わざるを得ない。
 
 ゆっくりペースではあるが、徐々に私立第1希望者が増えているようだから、こちらのほうが、やや現実味があるかもしれない。
 要は、募集人数を上回る、真の希望者がいればいいのだ。

 謎の埼玉方式は、公私の力関係において、完全に公立が上回っていた時代に編み出されたものだ。
 追いつくことが目標だった時代には有効であったが、限りなく近づくことはできても、この方式のまま追い越すのは難しい。

 今すぐガチな入試をやろうとする必要はないと思う。
 前述したように、状況を作り出せば自然にやらざるを得なくなり、人々もそれを当たり前のこととして受け入れるようになる。
 教育レベルの高さ、教育環境の良さなど私立の魅力を訴え続けることだ。むろん、そんなことは言われなくてもやっていると仰るだろうが、数字がそうは言っていないのだ。一層の努力と工夫を期待したい。