昨日、深谷商業高校を訪問した。
「よみうり進学メディア6月号(特集:専門分野を学ぶ)」の取材である。
◆ネギと渋沢栄一とふっかちゃん
学校の話に入る前に、JR高崎線「深谷駅」を紹介しておこう。
どことなく、東京駅丸の内口駅舎に似ているでしょう。
あちら(東京駅)は赤煉瓦作り、こちら(深谷駅)は赤煉瓦風タイル作りだが、見た目はそっくり。
その昔(大正時代)、東京駅駅舎が建設される際、深谷にあった日本煉瓦製造で生産された煉瓦が使用された。
そんな御縁があることから、深谷駅は東京駅を模して作られたのである。
日本煉瓦製造は、渋沢栄一もその設立に関わった会社だ。
NHK大河ドラマ「青天を衝け」のずっと以前から、深谷市は渋沢栄一生誕の地として売り出していたのである。
深谷と言えば、「ネギと渋沢栄一とふっかちゃん」
◆県内商業高校のフラッグシップ
深谷商業は大正10年(1921年)創立である。
町立としてスタートするが、2年後には県立に移管となる。
大正期には現在の熊谷商業・岩槻商業なども設立されているが、県立の商業学校としては深谷がもっとも古く、かつ一貫して商業学校(高校)であり続けてきた。
いわば格式の高い商業高校であり、県下商業系のフラッグシップとも言える学校なのである。
歴史を象徴するのが、校門を入ってすぐの深商記念館(二層楼)だ。
創業時の校舎・教室を復元したもので国の登録有形文化財に指定されている。
老朽化が激しく、平成23年から25年にかけて全面的な保存修復工事が行われた。
コロナ禍での現状は不明だが、通常であれば日曜日には一般公開(無料)されている。
◆募集では苦戦続く
現在、県内には商業系学科は17校30学科ある。
17校のうち6校(上尾・鴻巣・鳩ケ谷・鳩山・八潮南・市立川越)は、普通科併設校である。
17校のうち3校(越谷総合技術・新座総合技術・羽生実業)は、他の専門学科併設校である。
17校のうち8校(岩槻商業・浦和商業・大宮商業・熊谷商業・狭山経済・所沢商業・深谷商業・皆野)は、商業系のみの専門高校である。
2021年度(令和3年度)入試では、商業系全体の倍率は1.03倍だった。
上尾、市立川越といった学校自体の人気が高いところが全体の数字を引き上げている。
17校30学科のうち、半数を超える13校17学科が欠員補充を行った。
時代を反映し、情報処理科の倍率は比較的高い。
そんな中、深谷商業の結果は次のとおり。
【商業科】
募集人員 158人
入学許可候補者159人
【会計科】
募集人員 40人
入学許可候補者36人
【情報処理科】
募集人員 80人
入学許可候補者77人
名門・深谷商業にしてこの結果であるから、商業高校の将来は厳しいと言わざるを得ない。
◆非卒業率低く、大学進学率高い
深谷商業の特徴として、非卒業率が低く、大学進学率が高いことが挙げられる。
非卒業率は一般的用語ではないが、入学者のうち、その学校を卒業しなかったと考えられる者の割合を示したものである。
ある年度の卒業者数が100人、その学年の3年前の入学者が100人であった場合、ほぼ全員が途中離脱せず卒業したと推定される。
卒業者数が90人で、入学者が100人であれば、10人が途中離脱したと推定され、その場合、非卒業率は「10/100=10%」となる。
転編入などさまざまな状況が考えられるため、卒業者数と入学者数の差がすべて中退や進路変更と断ずることはできない。
深谷商業の非卒業率(平成2年3月卒業生・埼玉県調査)
卒業生数(272人)-入学者数(278人)=-6 非卒業率 2.16%
途中離脱した生徒は僅か6人、およそ98%が同校で3年間を全うし、無事卒業したと推定される。
この2.16%という非卒業率がいかに低いかは他の商業高校と比べてみれば分かる。
所沢商業 4.18%
狭山経済 5.69%
岩槻商業 6.97%
浦和商業 6.97%
大宮商業 9.21%
皆野 17.78%
同校の非卒業率2.16%は、農業・工業・商業・家庭といった職業系の専門高校の中ではもっとも低い数字である。
商業系専門高校の中では大学進学者の割合も高い方だ。
深谷商業の大学進学率(平成2年3月卒業生・埼玉県調査)
大学進学者数(40人)÷卒業生数(272人)=大学進学率14.7%
他の商業系専門高校を見てみよう。
狭山経済 54人 23.3%
浦和商業 60人 22.5%
熊谷商業 43人 18.6%
皆野 6人 16.2%(※卒業者数37人)
岩槻商業 22人 12.1%
所沢商業 22人 9.6%
大宮商業 17人 7.8%
こちらはトップではないが、かなり高い割合となっている。
職業系の専門高校であるから、大事なのは就職決定率や就職企業なのだが、決して大学進学への道が閉ざされているわけではないことが分かる。
教育課程を見ても、大学進学希望者にも配慮していることがうかがえる。
昨日は、授業もいくつか見させてもらったが、パソコン台数も豊富で、少人数の上、指導者が2~3人といった手厚い授業が行われていた。
授業の様子などは「よみうり進学メディア」でレポートする。
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