毎年小学6年と中学3年を対象に行われている全国学力テスト(正式には「全国学力・学習状況調査」)について、文部科学省は2023年度をめどに出題・解答をパソコンで行う方式に移行する方針を固めたということだ。

 時代の流れだから、それでいいだろう。集計の手間が大いに省け、経費節減につながる。
 ただし問題なのは、すでに発表された小中学校に一人一台のパソコンを配備する政策を後押しするのが隠れた目的、というか真の目的に見える点だ。
 パソコン配備は、国も一定の補助をするが、基本的には各自治体の施策となる。そこで、パソコン配備を進めないと学力テストに参加できませんよ、と、暗に言っているわけである。
 
 だが、こういうやり方をすると、「だったらテスト止めるわ」と言い出す自治体が出てくるわけで、ただでさえ批判が多い全国学力テストがグダグダになるぞ。そう予言しておこう。いや、断言だ。
 パソコンを広めるための道具(手段)として、全国学力テストを使おうというのは、誤った考え方だ。
 教育を改革するための道具(手段)として、入試を使おうとしてうまく行かなかっただろう。学習しない連中だ。

 私は全国学力テスト支持派である。
 毎年実施する必要はあるか、悉皆調査である必要はあるかなど議論の余地はあるが、「全国学力・学習状況調査」のうちの「学習状況調査」の部分に注目しているので、ぜひ継続してもらいたい。しかし、無理にパソコンとからめようとすると、この調査が後退してしまいそうで、そこを心配しているのである。

 パソコンの前にトイレじゃないの。
 以前に、パソコンは一人一台である必要はないと書いた記憶がある。パソコンの積極的な導入には賛成するが、一人一台である必要はない。
 それより、順番としてはトイレでしょう。温水洗浄便座のトイレ。
 パソコン一人一台よりウォシュレット一人一台。って、そんなには要らんか。

 狭い机と堅い椅子はどうする。
 パソコンだけ導入して、相変わらず狭い机と堅い椅子に座らせて勉強させるのかい?
 少人数になって教室にもゆとりが生まれたのだから、机が大きくなっても大丈夫だろう。椅子も、背もたれも座面も木製(合板)のではなく、メッシュ素材とか、もっと座り心地が良い物がいくらでもあるでしょう。
 まあ、小学生ぐらいだと、じっとしていないから座り心地なんぞどうでもいいかもしれないが、中学生や高校生には一日中座っていいても疲れない椅子を用意してやりたい。

 教育環境・学習環境の整備については、言い始めればきりがないわけだが、そういうのを洗いざらい出して、「やっぱりパソコン一人一台が優先だね」というなら別に文句はない。だが、はじめにパソコンありきで進んでいるようなので、いわゆる教育現場というものをちょっとは知っている者として、「ちょっと待った」の声をあげておこうと思うのである。