新型コロナ感染症による休校長期化。心配なのは学習の遅れ。なのだが、それは次回以降のテーマにして、今日は進路の問題を考えてみる。進学を含む進路だ。
中学3年生の場合は、ほとんど「進路≒進学」の範疇に収まる。だが、高校3年生の場合はそうはいかない。
◆休校は進学だけでなく就職も直撃している
平成31年3月卒業生の進路状況は次のとおりだ。
卒業生数 1.050.559人
大学等 574.308人(54.7%)
就職 184.115人(17.5%)
なお、出典は文部科学省「学校基本調査」である。最新の調査結果は2020年3月31日に公開されているが、ここに載せるためには計算が必要なので1年前の結果を使った。どうしても最新じゃないと納得できないという方はコチラへ。
「文部科学省・学校基本調査・卒業後の状況調査・高等学校」
さて、何が言いたいかというと、来年の大学入試はどうなるかも大事なのだが、もっと切羽詰まっているのは高校生の就職の方だよ、ということだ。
例年のスケジュールはこうだ。
6月1日~ 求人票受付(企業側の動き)
7月1日~ 求人票公開
9月5日~ 書類提出
9月16日~ 採用試験
6月1日以降ハローワークで受理された求人票が7月1日以降学校に届く。
生徒の会社選びはここから本格化する。採用担当者が学校を訪れるようになる。
9月5日から企業への応募書類提出が始まり、9月16日から採用試験が始まるから夏休みが勝負。専門高校や就職者の多い普通高校の進路担当者にとっても夏休みが勝負。
◆もし就職が半年延びたら
学校がいつ再開できるのかは、大学進学希望者としても切実な問題であるが、もっと待ったなしなのは就職希望者だ。
一部の生徒たちが、9月新学期にして卒業を来年夏に延ばせば、行事もできるし、部活の大会もできるし、受験勉強も十分とれるしなどと言っているようだが、それはまあ許そう。なんだかんだでまだ子供なんだから。
でも、マスコミがそれを変に持ち上げるのはよろしくない。
就職希望者は、いろいろ事情があってそうしているのだ。早く社会に出て親を助けたいという孝行息子や孝行娘がいっぱいいるんだよ。自分が働いて弟や妹は大学に行かせたいとまで言う感心な子もね。
その子たちにとって、来年3月に予定していた卒業が半年延びるということが、どういう意味を持つか分かりますよね。
このことも今後の議論の中に忘れずに入れておこう。
◆海外大学への留学・進学
ついでだから、海外大学への留学についても少し調べてみた。
取りざたされている9月新学期論だが、今のところ聞こえてくるのが国際標準・世界基準だからという漠然としたものと、留学生の受け入れや海外大学への留学に有利という点だけだ。入試がインフル流行期や大雪の時期と重ならないというが、半年ずらせば台風や豪雨、熱中症の時期と重なるから、どっちもどっちだ。コロナ対策というのは、今年限定の話だ。
少し古いが2017年の独立行政法人日本学生支援機構の調査によれば、海外留学した大学生は105.301人だ。(協定等に基づくものとそれ以外の合計)
留学先はアメリカがもっとも多く19.527人、次いでオーストラリア9.879人、カナダ9.440人、中国7.144人、韓国7.006人の順。
留学期間は1か月未満がもっとも多く66.876人。半年以上となると15.726人だ。
大学入学後の留学や、高卒後ダイレクトに海外大学に進学するケースは今後さらに増えるだろう。それ自体は好ましいことで、4月新学期の現行システムが障害だというなら変えればいい。
カレンダーは1月から、会計年度は4月から、学校年度は9月からと、やや面倒なことになるが慣れの問題だ。一昨日紹介した世界各国も必ずしも会計年度と学校年度が一致しているわけではない。
ただ、最初に書いたように就職問題を考えると、企業も含めた社会的合意が必要だ。就職慣行から全部見直さないといけない。
◆9月新学期論が突然浮上した理由
これはまったくの憶測だが、私は、目くらまし戦術ではないかと疑っている。
補正予算審議にぶつけてきたか、緊急事態宣言延長にかぶせてきたか。
人々の関心は分かりやすい教育問題に行き、議論が分散する。そこが狙い。政治家がよく使う手だ。
4月30日に成立した補正予算。およそでもいいから金額言える人いるかな? あるいは助成金や給付金の種類と金額。個人的には、この使い方でいいの?この程度の金額でいいの?と疑問に思う点が多々ある。
細かい話はまた別の機会に譲るが、総額25.7兆円。これでは全然足りないと思うけどな。こっちに猛烈なツッコミを入れないと、われわれの経済が、暮しが、社会が、立ち行かなくなる。
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