私立学校は休校中、オンライン授業により何とか学習の遅れを食い止めているが、公立にはその環境がない。そこで、不公平だ、格差が広がるなどと不満を述べている人がいる。
 気持ちは分からないじゃないが、では平時に、たとえばコロナのコの字もなかった1年前の5月に、ICT教育を推進するために各家庭でWi-Fiなど通信環境を整えてくれ、端末を用意してくれ、基本自己負担で、と言ったら、それはそれでいろいろと不満を述べたことだろう。

 前にも書いたが、私立学校も今のような事態を想定してタブレットなど端末機器を生徒に持たせたわけではない。目的は別のところにあったが、それがたまたま生きた。双方向のオンライン授業自体は多くの私立学校にとって初めての経験だ。みな試行錯誤でやっている。

 普段だったら、何かと理由をつけて導入に反対する人も、さすがに今の状況ではトーンダウンせざるを得ないだろう。これを機に、公立も端末導入や、学校・家庭双方の通信環境整備を加速してもらおう。

 で、ここが今日のポイントなのだが、ICT教育が思うように進んでいないのは実は私立も同様で、世間の人が想像しているほど進んでいない。
 このブログではICT教育の先進事例として開智未来中高や本庄第一中学校を取り上げたが、両校ともまだ創立から10年も経っていない新しい学校だ。それで、初期段階から、タブレットやPCをいわば標準装備として取り入れることができた。新規に参入する学校は不利なことが多いのだが、その時点における最新の技術や手法を取り入れやすいというのが、数少ない利点だ。両校はその利点をうまく生かした。

 私立でも、歴史のある学校ほど新しいモノやコトの導入は難しい。結果を残している学校であればなおさらだ。
 今までのやり方で生徒は十分伸びているではないか。安易に流行に乗るべきではない。と、こんな意見が飛び交っているのは公立と同じだ。若手は積極的だが、ベテランほど消極的というのも公立と同じ。

 そんなわけだから、本ブログをお読みになっている公立の先生方、世間と同じレベルで私立はいいな、うちらは公立だからなどと言っていてはいけない。まあ私の知る限りの先生方の中にはそんな人はいないのだが、思考停止している先生方には教えてあげたほうがいい。すべての私立が潤沢な資金を持っているわけじゃないし、保護者がみな裕福なわけでもないということを。