茨城県県立高校入試で採点ミスがあった。これについては新聞各紙・NHKニュースなどが報道しているのでご存知の方が多いだろう。
 見逃している方はとりあえずコチラへ。
 新たに52校で406件の入試採点ミス 開示請求で判明(3月22日 朝日新聞)

◆採点ミス発覚の経緯
 報道によると。
 1 茨城県教育委員会は22日、52校で計406件の採点ミスが判明したと発表した。
 2 この結果、不合格となった受験生2人を追加合格とした(境・取手一)。
 3 採点ミスがわかったきっかけは、牛久栄進高校を不合格となった受験生の保護者による全5教科の答案の開示請求だった。
 4 同校で再確認したところ、国語で2件の採点ミスが発見され、受験生1人の追加合格を認めた。
 5 県教委が改めて93校分の答案を点検したところ正誤の誤りが142件、配点や部分点のミスが113件、点数の計算漏れが77件など計406件のミスが見つかった。
 6 県教委は昨年度と今年度の答案全てを再点検すると発表した。 

  採点ミス発覚のきっかけは、受験生保護者による開示請求ということだ。
 通常は5教科の得点と合計点のみの開示であり、この点は茨城県も埼玉県も同じだ。
 詳しいことは分からないが、県情報公開条例に基づいて答案の開示を求めたのだろう。

 よくぞ、そこまでやった。
 とうのは、皮肉でもなんでもなく、そのおかげで課題が浮かび上がったので良かったという意味だ。
 もちろん、子供の合格が勝ち取れたことはもっと良かった。
 牛久栄進高校は、1980年代の創立だから水戸第一や土浦第一などの伝統校には遠く及ばないが、県立の中では上位に属する学校だ。

 ついでだから、ここで埼玉県の得点開示について紹介しておこう。
◆埼玉県公立高校入試における学力検査の得点開示
 埼玉県公立入試では、学力検査の得点の簡易開示が行われている。
 あくまでも学力検査得点のみの開示である。
 
 その内容や方法は次のとおりである。
 元データは県教委ホームページにある令和3年度入試についてのQ&Aである。

Q16-1:学力検査の得点を見せてもらえると聞きました。どのようにすればよいですか。
 学力検査の得点は、いわゆる「簡易開示」の対象です。定められた期間内に受検した高等学校に請求してください。
 その際、受検票と本人であることを証明する書類(生徒手帳などの身分証明書または健康保険証等)が必要です。

Q16-2:学力検査の得点の「簡易開示」の請求ができる期間は決まっていますか。
 学力検査の得点の「簡易開示」を請求できる期間は、令和3年3月16日(火曜日)から令和3年3月22日(月曜日)までです。ただし、土曜日、日曜日及び休日は除きます。学力検査等の当日に、「簡易開示」について各高等学校に案内を掲示しますので御確認ください。

Q16-3:学力検査の得点を印刷して渡してほしいのですが、できますか。
 埼玉県の条例により、文書等をお渡しすることはできません。なお、本人がメモを取ることは差し支えありません。

Q16-4:学力検査の得点を電話で教えてほしいのですが、できますか。
 本人確認が必要なため電話ではお答えできません。「簡易開示」の実施期間に、ご本人が受検した学校においでください。

Q16-5:学力検査の得点は、簡易開示の手続きにより保護者にも開示してもらえますか。
 簡易開示の手続きによって得点を閲覧できるのは、本人だけです。

◆採点ミスはなくせない
 話を採点ミスに戻そう。
 マスコミ的には、「またもや学校が入試でミス」ということで、有難いネタといったところだが、当の受験生にとってはこんなことがあったらたまらない。
 しっかりやってくれ。
 なのだが、人間がやることにミスは付き物だし、「ちゃんとやれ」とか「真面目にやれ」といった精神論では解決しない。

 私も高校教員として採点には携わったことがあるが、いい加減な気持ちで採点業務に携わる教員などいるはずがない。
 緩みが原因のミスであれば、むしろ話は簡単で、慎重に、真剣に、注意深くやった結果、それでもミスが出るところが問題なのだ。

 精神論で解決できるなら、そうすればいいが、それが困難な場合はシステムで解決する。
 全国のことはよく分からないが、近いところでは2014年に東京都立高校で採点ミスが見つかり、それがきっかけとなって都立高校入試にマークシート方式が採用されることになった。
 これはシステムによる解決策だ。
 機械が絶対にミスをしないという保障はないが、人間よりは少ないだろう。
 ただし、記述・論述問題が激減し、表現力を重視するという目標からは遠ざかった。

◆入試はできるだけシンプルに
 この話を始めると、長くなるので出来るだけ短く話すが、私は入試というのはあまり複雑なものにせず、シンプルなほうがいいと考えている。
 入学試験は高校側から見て教育活動そのものではない。
 教育活動は合理化には馴染まないし、できるだけ妥協しないほうがいい。
 しかし、入試は入学者を決めるという目的のためだけに行われる業務に過ぎないから、合理化してもいいし、妥協も許される。

 もちろん、教育活動そのものではないというだけで教育とは無関係というわけではないから、教育的な配慮は必要だ。
 合理化や妥協と言っても、中学校の先生や生徒(受験生)、保護者から受け入れられる範囲である。

 入試を3日ががり4日がかりにし、試験時間も増やし、何なら音美体技の試験も実施し、論文も実技も面接も自己表現も全部入れれば、多面的に生徒を評価してあげられるが、それでは受験生の負担が増すだけだ。
 選抜する高校側としても、それだけのリソース(人、物、金)を入試業務につぎ込むなら、それを本来の教育活動に回したほうがいい。

 今回の問題を「あってはならないこと。再発を防ぐよう検討する」というお決まりの謝罪で終わらせてはならない。
 精神論も大事だがそれだけではダメ。
 単なる採点ミス問題に終わらせず、入試システム全体に踏み込んだ解決策を模索して欲しいと思う。

 わが埼玉県も、お隣茨城県で起きたこの一件を「他山の石」としよう。
 さて「他山の石」、はたしてこの使い方でいいのだろうか。
 自民党・二階俊博幹事長、どうです?

 注)公職選挙法違反の罪に問われた元法相の河井克行被告について、自民党の二階幹事長が「他山の石」と表現したことを批判されている。