文部科学省が考案した「教師のバトン」プロジェクト。まあ、あまり期待はできないが、とりあえず様子をみてみようか。
教員に新たに何かを課そうというなら反論の一つも試みるが、教員希望者が減りつつある中、なんとか人気回復を図ろうという広報活動のようだから、いいだろう。
◆プロジェクトの目的と方法は
文部科学省のHPによれば、プロジェクトの目的は次のとおりである。
「現場で日々奮闘する現職の教師、教職を目指す方々の皆さんで、学校の働き方改革や新しい教育実践の事例、学校にまつわる日常を遠く離れた教師、ベテラン教師から若い教師に、現職の教師から教師を目指す方々に、学校の未来に向けてバトンを繋ぐためのプロジェクトです」
「本プロジェクトは、学校での働き方改革による職場環境の改善やICTの効果的な活用、新しい教育実践など、学校現場で進行中の様々な改革事例やエピソードについて、現職の教師や保護者等がTwitter等のSNSで投稿いただくことにより、全国の学校現場の取組や、日々の教育活動における教師の思いを社会に広く知っていただくとともに、教職を目指す学生・社会人の方々の準備に役立てていただく取組です」
「『#教師のバトン』のハッシュタグをつけた投稿をTwitterや特設フォームにて募集し、プロジェクト公式Twitter等のSNSで発信します」
◆一応、フォローはしてみたが
私も人並みにTwitter、Facebook、Instagramなどのアカウントは持っている。
が、他人を見る専門で、それほど熱心なユーザーというわけではない。
滅多に投稿しない。
ブログで精一杯だ。
だから、この広報活動がそれだけ成果を上げられるかは実際よく分からない。
一応フォローはしてみたが、当初はそこそこ話題になるものの、尻すぼみに終わるような気がする。
そもそも教員希望者の減少は広報不足にあるのか。
もしそうだとしたら、様々な手法による広報展開は必要であり、うまくはまれば一定の成果を収められるだろう。
◆SNSは諸刃の剣
文部科学省は、マスコミによるネガティブな報道が教員希望者の減少に影響を与えていると考えているらしい。
たしかにそれはある。
ニュースで取り上げられるのはネガティブな面ばかりであるから、それでは希望者の意欲は低下するばかりだろう。
その意味では、ポジティブな情報を自ら発信しようというのは、それほど間違ったやり方ではない。
ただ、そのやり方がSNSなのかという点については、やや疑問に思う。
「#教師のバトン」で集まるのは、ネガティブな投稿の方が多いだろう。
そんな中、ポジティブな意見を投稿したら総攻撃される恐れがある。
そういうところに、現役の先生方が進んで意見を発信するだろうか。
私などはとっくの昔に引退した人間だから、失うものは何もないが、現役の先生方にとってはリスクが大きいと思う。
また、教育実践や改革事例などを投稿して欲しいようだが、現場の第一線で奮闘している先生方ほど、そのような時間がない。
学生側から見て、一番聞きたい人の話が聞けるだろうか。
下手をしたら、特定の層の先生たちによる自己PRの場にもなりかねない。
というわけで功罪半ばするSNSであるが、とりあえずやってみることには賛成。
◆広報以前に実態の改善でしょう
おそらく、多くの人の意見はここに集約されるだろう。
主因は広報不足じゃない。
実態を改善すれば希望者は増える。
私は学校はブラック職場ではないと考えている。
世の中全体で見れば、むしろホワイト、少なくともグレー。
これを言うと、間違いなくコメント欄が荒れる。
しかし、だからこのままでいいとは思っていないし、言ってもいない。
私が現役だった時代と今を比べて、昔はあったが今はなくなったという仕事はほとんどなく、何十年も前に私がやってきた仕事は、今の先生もやっている。
ただし、世の中の進歩で機械が導入されたりしてだいぶ楽にはなったように見える。
一方、昔はそんな仕事はなかったということを今の先生はかなりやっている。
驚くほどやっている。
減ったものが少なく、増えたものが多ければ、全体として負担が増えるのは道理で、今の先生たちは私が現役だった時代に比べ、時間的にも精神的にもゆとりがないように見える。
教える側のゆとりの無さは、新たな問題を引き起こす因子となる。
その対策でさらに多忙を極め、ゆとりを失くすという負のスパイラル。
ここにメスを入れるのが文部科学省の役目である。
Twitterで楽しい体験を語るのは、それはそれでやればいいと思う。
ただし、根本問題の解決にはならない。
コメントを残す