私はかつて広告業界というところに身をおいていたのである。ただ、ほんの一時期である。長い人生の中では、一瞬と言ったほうが適切だ。
で、この業界には「3Bの法則」と呼ばれる経験則がある。
3Bとは「Baby (赤ちゃん)」「Beauty(美人)」「 Beast(動物)」である。
これらを広告に取り入れると、人の目を惹きやすく、好感度も高まりやすいと言われているのだ。
ところで。
Baby(赤ちゃん)、Beauty(美人)はいいとして、動物は普通Animalだろうと思うのだが、何とか3Bとまとめたかったのだろう。
そこで無理やりBeastを持ってきて動物ということにした。
Beastは動物は動物でも野獣である。
有名ミュージカルに「Beauty and the Beast」というのがあるが、これの邦題は「美女と野獣」だ。
話戻って。
たしかに、これまでのヒットCMの中には3Bを取り入れたものが少なくない。
これが世界的な傾向なのか、日本特有の現象なのかは分からないが、ある程度は当たっていそうだ。
そして、この法則は、CMだけでなくテレビ番組や、最近で言えばYouTubeやブログなどにも当てはまりそうだ。
試しにYouTubeで、「赤ちゃん」や「幼児」「子供」と検索してみる。
無数の動画チャンネルがヒットする。
同じく、「動物」または「犬」「猫」「ペット」などと検索してみると、これまたわんさと出てくる。
やはり、これらは定番コンテンツと言えるのだろう。
「若く美人のお母さん」と「赤ちゃん(幼児)」と「可愛いペット」は最強トリオであり、それだけで注目度・好感度「爆上げ」の動画が完成するという仕掛けだ。
私も今度YouTube動画を作るときは、「可愛いペット」の起用を検討してみよう。
「若く美人のお母さん」はもう無理だ。
難しい話をしている後ろで、犬や猫がウロチョロしていれば、ちょっとは好感度が上がるだろう。
◆自分の子供を使ったYouTubeビジネス
近頃目立つのは自分の子供を使ったYouTubeビジネスだ。
YouTubeは見るのはタダだが、前後や途中に広告が入る。その広告料が動画制作者(つまりユーチューバー)の収入となるのは皆さんご存じのとおりだ。
自分の子供を主役にして閲覧数を稼ぎ、広告収入を得る。
一つのビジネスモデルとして「あり」だとは思う。
子供の発想や行動は見ていて面白い。
結構、楽しませてもらっている。
だが、あまりにも親の下心が見え見えだと興ざめする。
もちろん、そういうのは見なければ済むわけだ。
が、子が成長して後、親が自分を使って金儲けをしていたことに気づいたらどう思うんだろうとか、儲けた金はどこに消えたんだろうなどと思ったら、親子関係が微妙になるんじゃないかと心配になる。
まあ、余計なお世話か。
そんな心配せずとも、親は己の遊興費などには使わず、将来の学費の足しにするはずである。
「ゆたぼん」という子供ユーチューバーがいる。
小学生のとき不登校で売り出した。
今度中学校に上がる年齢だが、中学校には行かないと宣言している。
親もそれで構わないようだ。
学校に通い先生の言いなりになっている同級生がロボットに見えたそうだ。
親のビジネスに利用されている自分こそロボットであることに、まだ気づいていないようだ。
まあ、年齢的に仕方ないところではある。
YouTubeの創業者も、それを買収したGoogleの創業者も、みんな大学を出ている。
高度な学問と技術を習得している。
そんな彼らのおかげで有名になり、稼がしてもらっている。
親の脚本演出かもしれないが、批判して止まないロボットみたいな人々が創造した世界で、ロボットみたいに振る舞っていることの矛盾に気づくのはまだ先の話だろう。
もしかしたら一生気づかないかもしれない。
それはそれで幸せかもしれない。
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