連休明けに専門高校を取材するので、少し予習をしておこうと思った。学校に限ったことではないが、取材というのは出たとこ勝負ではダメで、出来る限り予習をしておかなければならない。
 パンフレットやWEBサイトを見れば簡単に分かるようなことを質問したのでは、聞かれた方もガッカリだ。まともに答える気をなくす。いい話を引き出せない。
 さて、今日調べたのは学科別の「非卒業者の割合」だ。

 いま現在入手できる最新かつ、もっとも正確と考えられる資料は2020年(令和2年)3月卒業生の進路状況だ。
 今年(令和3年)3月卒業生の資料はもうしばらく待つ必要がある。
 したがって、1年前のデータということになる。

 埼玉県教委のサイトに「調査統計・資料」というのがあり、この中に「高等学校卒業者の進路状況調査」というのがあって、ここに過去13年分のデータがある。
 まずここで、学校ごと、あるいは学科ごとの卒業者数を調べる。

 次に、同じく「調査統計・資料」の中に、「高等学校入学状況調査」というのがあり、14年分のデータがある。
 令和2年3月卒業者は、3年前、すなわち昭和29年4月入学者であるから、その差を調べれば「非卒業者数及びその割合」が分かる。
 「令和2年3月卒業者数」-「平成29年4月入学者数」=非卒業者数

 非卒業者は進路変更者や中途退学者の数字に近いと考えられるが、転校(転入・転出)の場合もある。
 転校して行った生徒が一人、転校してきた生徒が一人といったケースであれば、統計的には卒業者数と(3年前の)入学者数は等しくなるだろう。

 進路変更や中途退学の理由は様々だろう。
 経済的事情などで続けたくても続けられなかったケースや、本人にとって別の学校に移ったほうが良かったというケースもあるだろう。
 そういった点に注意しながら数字を見て行く必要がある。

◆学科ごとの非卒業者割合
 まず、普通科と職業系専門学科を比較してみよう。
 【公立・普通科】
 入学者2万9528人-卒業者2万8001人=非卒業者1527人(5.17%)
 【公立・農業系学科】
 入学者824人-卒業者721人=非卒業者103人(12.50%)
 【公立・工業系学科】
 入学者2745人-卒業者2448人=非卒業者297人(10.82%)
 【公立・商業系学科】
 入学者2682人-卒業者2494人=非卒業者188人(7.01%)
 【公立・家庭系学科】
 入学者319人-卒業者285人=非卒業者34人(10.66%)

 予想できたことだが、普通科に比べ、職業系専門学科の非卒業者割合が高い。
 実際に入ってみたら、思ったほど興味が持てなかった。
 自分には向いていなかった。
 そういったケースであろうと想像できる。
 1年次は普通科とあまり変わらない教育課程なので、それに嫌気が差したとか学力的について行けなかったというケースも考えられる。

 中学校や塾の先生方で専門高校卒という人はきわめて少ないので、進路指導面での難しさもある。
 普通科の場合であれば、「高校に入ったら、こんなことを勉強するんだよ」と具体的に語ってやれるが、職業系専門学科となると、それが難しい。

 高校の先生方も強調されているように、体験入学などには必ず参加し、興味を持てそうか、適性がありそうかを見極めるしか今のところ方法はなさそうだ。

 なお、参考までに、上記以外の主な専門学科の非卒業者割合は次のとおりだ。
 【公立・看護系】 3.75%
 【公立・外国語系】5.16%
 【公立・美術系】 8.26%
 【公立・書道系】 2.44%
 【公立・音楽系】 6.84%
 【公立・体育系】 3.68%
 【公立・理数系】 2.02%
 【公立・福祉系】 27.54%
 【公立・人文系】 2.44%
 【公立・国際文化系】4.88%
 【公立・映像芸術系】5.00%
 【公立・舞台芸術系】5.00%
 【公立・総合学科】 8.80%

◆入試倍率との相関
 学校ごとのデータを見てみると、予想通りだが入試倍率との相関が高い。
 倍率が低く、定員割れしている学校(学科)は非卒業者の割合も高い。
 普通科の場合だと、上尾橘・妻沼・岩槻北陵・越生・児玉・新座・蓮田松韻・和光・川越初雁などの非卒業者割合が高いわけだが、これらの学校は入試で定員割れしており全入状態だった。
 工業系でも毎年コンスタントに倍率が出ている川越工業あたりは5.34%と低い。
 また商業系では深谷商業が2.16%の低率となっている。

 非卒業者の割合が高い学校及び学科はそれだけでイメージがよろしくないのだが、実際に学校を訪れてみると生徒は真剣に、また生き生きと学んでいる。
 まあ、自分の興味や適性と、学ぶ内容がマッチしたのだから当然と言えば当然だ。