私は綱渡りが得意である。人生そのものが綱渡りだからだ。
 命綱をつけず、落ちたら終わりのtightrope(タイトロープ)の上を何とかバランスをとりながら前進する。
 もう何度倒産寸前まで行ったことか。
 零細企業の経営者は多かれ少なかれ、そんな綱渡り人生を送っているんじゃないかな。

 いや、それはお前が無能だからであって、幅広の安全な道路を鼻歌歌いながら歩んでいるやつだっているよ。
 ごもっとも。

 で、今日は、そういう立派な人の話はひとまずおいて、大した能力がない者がいかにして綱渡りを成功させるかを語ろう。

 まず重要なのは、絶対に下を見ないことだ
 落ちたらどうしよう。
 そういう不安から、どうしても下を見たくなる。
 だが、下を見れば、余計に不安が増す。
 不安どころか恐怖である。
 恐怖は正常な判断を失わせる。
 だから、絶対に下を向いてはいけない。
 では、どこを見るか。

 実際にサーカスで綱渡りをやったり、体操で平均台をやったことはなくても、皆さんも片足バランスぐらいならやったことはあるだろう。
 あれって、目を閉じてやると難しい。
 上手くやるコツは、顔を上げて、目をしっかり見開いて、前方を見ることだ。それも近くではなく遠くを

 昔、中型二輪免許を取った時、教官は一本橋のコツをこう教えた。
 「バイクは目線の方向に進むんだ、俯くな。前を見ろ」
 でも、脱輪が心配でどうしても下を見てしまう。
 これが失敗の原因。

 自分ではやったことはないが、体操の平均台もたぶん同じなんだろうね。
 落下が心配で足元を確認したくなるが、背筋を伸ばして前を見たほうが落下のリスクを回避できる。

 そんなわけだから、落ちたらどうしようと心配で仕方ない受験生には、俯くな、前を見て進めとアドバイスしておこう。
 ゴールにたどり着きたかったら、不安があっても、辛いことがあっても、顔を上げるんだ。
 前を、できるだけ前を、見るんだ。
 そうすれば、必ずうまく行くよ。

 まあ、このブログを受験生が見ているとは思えないので、塾の先生方から綱渡り爺さんのメッセージとして伝えてもらえれば幸いである。