このところアンケートに関わる仕事をずっとやっていた。
 そのため「アンケート」という言葉に反応しやすくなっているようだ。

 こんなニュースがあった。
 児童生徒にアンケートへ 中3逮捕で戸田市教委(共同通信)
 20日、渋谷区の路上で母娘が刺されるという事件があり、戸田市の中学3年の少女(15)が殺人未遂容疑で逮捕された。
 これを受けて、戸田市教育委員会は、夏休み明けに、児童生徒に生活上の悩みについてアンケートすると発表した。
 
 渋谷の事件をご存知ない方は、各社報じているが、とりあえずこちら。
 東京 渋谷区で母娘2人が刃物で刺されけが 10代の少女を逮捕(NHK)
 
 もう少し詳しく知りたければ、地元紙埼玉新聞ニュースへ。
 中3女子を逮捕、面識ない親子を刺す…母殺す練習で 生徒の地元で動揺、誰なのか特定できず始業式へ(埼玉新聞)
 埼玉新聞の記事では、加害者の在籍校、氏名は明らかになっていないとしているが、その後、特定されているという。

 さて。
 事件そのものは深刻に受け止めなければならない。

 が、それはそれとして、その緊急対応がアンケートというのは、どういうことなのだ。
 このところ半ばアンケート屋と化している私としては、「アンケートなめんなよ」という気分だ。

 加害者生徒の個人的問題だが、学校や教育委員会も知らんぷりはできないだろう。
 世間は、「学校はどんな指導をしているんだ」となりがちだ。
 加害者生徒が凶行に及んだのは、学校(の指導)に問題があったのではないかというわけだ。

 だから、何かしら手を打たなければならない。
 では、とりあえずアンケート。
 というわけだが、いかにも安易だ。
 時間稼ぎかアリバイ作りにしかみえない。

 何をどうすべきか。
 目的・目標を明らかにする。
 そのプロセスの中で仮説を立てる。
 その仮説を検証するための一つの手段としてアンケートがある。

 質問内容はしっかり吟味しなければならない。
 質問の仕方、選択肢、回答方法など、設計がすべてだ。
 時にはそのために予備調査を実施することもある。
 実施方法も結果を左右するので、その点も検討が必要だ。

 それを夏休み明けに実施するという。
 もう来週から新学期だというのに、そんなに急に出来るのか。

 どうせ「今、悩んでいることはありますか」程度のものだろう。
 
 でも、そんなことをしても、何も出てこない。
 教室で先生から配られたアンケート用紙に、誰が本気で悩みを打ち明けるだろう。

 今回加害者女子生徒は、「死刑になりたい」「母親を殺す予行練習をしようと思った」と供述しているという(埼玉新聞記事)。
 もし本気でそう思っていたとしたら。
 というか、この子は本気で思ってしまったようだが。
 これ、アンケートで書くかな。
 「特にありません」としか書かないと思うね。

 前述したように、市教委としては「対策を考えています」というポーズを見せなくてはならない。
 そんな中、苦し紛れという感が否めない。
 なので、半ば同情しつつ書いているわけだが、こんなことで貴重な時間を浪費していいのかと思う。