埼玉県が実施しているプロジェクトに、「越境×探究!未来共創プロジェクト」というものがある。

 一回では覚えられない名称だ。
 令和3年度までは、「学校地域WIN-WINプロジェクトと呼ばれていた。
 こっちの方が何となく意味が伝わってきそうだ。

 企業・NPO・市町村・地域人材(ここではまとめて「地域」と呼んでいる)の力を活用し実社会からの学びを充実させるとともに、学校の力を地域で生かす取組を推進するのが目的だ。

 たまたま県政ニュースを見ていたら、11月末から12月にかけて、このプロジェクトの一環で、企業・団体と連携した授業が行われることが分かった。
 実社会からの学びを促進!「越境×探究!未来共創プロジェクト!」県立高校が企業・団体と連携して授業を実施します。

◆バンカー(銀行員)による金融教育
 本日(11月28日)は、県立蓮田松韻高校において、連携先の一つである埼玉りそな銀行による「金融教育」の授業があるというので見学に行った。

 授業は1年生社会の必修科目である「公共」の中で行われた。
 法や政治・経済・社会などを幅広く学ぶという点では、以前の「現代社会」に近いが、主権者(有権者)としての教育、消費者としての教育により重点が置かれているようだ。授業形式としては当然ながら対話的な学びが重視される。

 講師は若い女性の方だった。
 先生以外の人が50分の集団授業を維持できるのかと多少の不安を感じていたが、杞憂だった。最近の若い人はプレゼンがお上手。
 もちろん「プレゼン=授業」ではないわけだが、構成内容も時間配分も、資料もスライドも、さらには生徒への発問も、なかなか堂に入っているではないか。おそらく、それなりに場数を踏んでいるのだろう。

 大昔、高校社会科教員だった私からすれば、学校の先生でも十分教えられる内容であるが、時に外部の人に教えてもらうのは生徒にとって良い刺激となる。
 生徒たちは、講師の方に失礼があってはいけないと、いつも以上に反応が良いようだ。ちゃんと礼儀をわきまえている。
 本来の担当の先生が黒子に徹しつつ、適宜生徒フォローに回っているのもプロの技だ。

◆変わる家庭科の授業
 6時間目の「公共」に先立って、「家庭総合」の授業も見た。
 こちらは埼玉県消費生活課から講師を招いての授業だ。

 お役人の授業?
 なんか退屈そうだな。
 などと、失礼な先入観をもってしまった私だが、これが全くの見当はずれであって、実に見事な授業。
 若手の女性講師だったが、聞けばこの学校には3年前から来ているとのことで、生徒とのコミュニケーションも先生顔負けだ。日々現場で企業指導に当たっている点も強みだ。

 主に扱ったのは、不当表示広告(景品表示法)だ。
 若者がネット広告に接する機会が多い時代、こうした消費者教育は必須だろう。

 家庭科と言えば被服と食物というのは遠い昔の話で、現代の家庭科は、家族や家庭や保育のこと、消費や経済生活のことなど、その守備範囲はとてつもなく広い。とてもではないが一人の教員の手には負えない。そういう意味では、外部との連携をもっとも深めるべき教科の一つと言えるかもしれない。

◆超少人数教育
 この学校は、幸か不幸か入学者が少ない。
 さらに、その少ない人数を6クラスに分けているので、一授業当たりの生徒数は20人に満たない。超少人数教育が実現しているわけである。

 授業の様子は頻繁にHPで発信されている。
 最近のものを紹介しておこう。
授業の様子⑪
授業の様子⑩
 タイトルの付け方はもう少し何とかならんかと思うが、改めて見てみると今日参観した授業の雰囲気が、日常的なものだと分かる。

 本日の模様は埼玉新聞のネット記事で取り上げる予定でいたが、なぜか校長先生から、写真データを消去するように言われた。仕方ないのでSDカードごと学校に置いてきた。なので写真はなし。記事にもしない。そう言えば、最初に挨拶したときに、我々のような存在は迷惑だと言っていたっけ。まあ、身に覚えがなくはない。