来シーズン以降の生徒募集イベントについて提案をしておこうと思う。
 各校が校内で行うイベントではなく、主に校外で実施される合同説明会のようなイベントに関して、である。

 これは先日の「どこはや。会」の講演でも言ったことだが、ここでも念のため言っておこう。
 現代における最強のパワーワードは「教員の働き方改革」である。
 水戸黄門のご印籠のように、この言葉を聞いた途端、誰もが「ハハー」とひれ伏すしかない。
 「教員の負担が大きいから止めよう」では、サボったり楽をしようとしているのではないかと言われかねない。
 だが、「教員の働き方改革に逆行するから止めよう」は、どこからも誰からも非難され反論されることはない。
 これが時代の空気というものである。

 これまで、あるイベントに参加するかどうかは、主として「費用対効果」の観点から決められていただろう。
 通常、イベントへの出展には費用(出展料)がかかるわけで、それに対しどのくらいの集客が期待されるかが、参加不参加の判断基準となる。
 これはある意味分かりやすい。
 出展費用にしても集客にしても具体的な数字で表されるからだ。
 しかし、これからはここに、「教員の働き方改革」に沿うものか、それとも逆行するものかという抽象的な、倫理的な、哲学的な概念が持ち込まれる。
 こいつはなかなか難しい。
 コスパは悪くないが、教員の働き方改革に逆行するから不参加。
 こんな判断が下される時代なのだ。
 主催者側もそのことをよく考えたほうがいい。
 いや、必ず考えなければならない。

◆イベントに個別相談は要らない
 とりあえず埼玉の皆さんは、スーパーアリーナの「彩の国進学フェア」をイメージしてもらおう。
 自分で企画しておいて申し訳ないが、あれは必ずしもコスパは良くない。
 来場者の待ち時間が長過ぎる。
 (最近は整理券を発行するなどしてただじっと待つ時間を減らす努力を各校がされているが)

 そこで、この手の合同イベントでは入試相談(確約に関する相談)はしない。
 これを常識にする。
 私立高校側は「入試相談は高校内で行われる個別相談の場でさせていただきます」と宣言する。
 実際にそうしている学校もある。
 欠席が多いとか、体が弱いとか、悩みごとも高校内での個別相談で受け付ける。
 たぶん、これだけで回転はものすごく早くなる。(コスパは良くなる)
 1人当たりの相談時間を短縮すれば1.5倍はさばけるだろう。

 公立も同様で、込み入った話は学校でしてもらう。

◆学会方式を取り入れる
 学校や塾の先生方だったら学会方式で通じるかな。
 よく学会で、発表セッションとポスターセッションを組み合わせているけど、あの方式。
 最近は高校生の発表会でも、順繰りにプレゼンをするセッションと、ポスター発表をするセッションを同時展開していたりする。
 この方式をいろいろな場面で導入する。

 たとえば「彩の国進学フェア」などでも、いっそ机も椅子も取っ払ってポスター発表形式にしてしまう。
 席につくにはちょっとした勇気が要るけど、半分立ち話みたいだったら抵抗は少ない。
 人気薄の高校にお勧めの方法だ。

◆ミニ説明会がミニではなくなる
 学校説明会というと、校長挨拶から始まって小一時間いろいろな話があって、希望者はその後個別相談を受けるという形が多い。
 それも悪くはない。
 でも、ぼちぼちその方式を疑ってみようじゃないか。
 いや、もちろんそれがダメだと言っているわけではなく、別のスタイルも取り入れたらどうかと言っている。

 今年度、浦和高校は大規模な説明会(2回)とは別に、土曜公開授業の度にミニ説明会を行っていた。
 30分程度の説明会が3ラウンドか4ラウンドくらい行われていて、来場者はそのどれかを聞く。
 それ以外の時間は自由に授業を見て回る。
 30分の説明をミニと称しているが全然ミニじゃない。これで十分。
 一方的な話を1時間近く聞かされるよりずっといい。

 ということで、各学校には正規の授業ではなく短縮授業方式を取り入れるよう提案したい。
 また、説明会と個別相談を縦に置くのではなく、並列に置くことも検討してもらいたい。
 説明、見学、体験、ポスター発表、個別相談などがパラレルに行われている状態を考えてみる。
 あとは、「教員の働き方改革」の紋所とどう折り合いをつけるかである。