昨日の続きである。 
 前年同期に比べ大きく上がった学校を再掲する。
 
 市立川越 +0.84
 杉戸   +0.33
 富士見  +0.26
 蕨    +0.25
 川口北  +0.23
 川口   +0.21
 春日部  +0.19
 所沢西  +0.19

 今日取り上げるのは、川口北・蕨・春日部である。

◆女子が急増、川口北
 川口北の第1回調査時点における倍率推移は次のとおりだ。

 2017年度 1.46
 2018   1.57
 2019   1.30
 2020   1.41
 2021   1.02
 2022   1.01
 2023   1.16
 2024   1.40
            
 実人数でみると、昨年同期が416人に対し、今年は500人と84人増えている。男女別に見ると、男子は249人から258人と僅か9人の増加にとどまっているが、女子は167人から242人と75人増えている。つまり、今回の倍率上昇は、女子の希望者増加によってもたらされたものである。
 念のため、女子の希望者数推移を見てみよう。

 2020年度 201人 
 2021   139人
 2022   133人
 2023   153人
 2024   242人

 1.41倍だった2020年度は201人だったが、倍率が1.02、1.01と落ちた2021年度、2022年度は139人、133人と大きく減らしている。倍率低下の主因が女子の激減だったことが分かる。
 昨年度は女子が153人とやや増加し、その分全体倍率も上がった。
 そして今回、女子の急増により4年前の1.41倍とほぼ並ぶ1.40倍まで上昇した。倍率的にはほぼ同じだが、女子は201人から242人と大きく増えている点が興味深い。来年度、開校以来の制服が一新されるが、その効果があったのだろうか。

◆文武両道との決別
 川口北の今回の倍率上昇が、仮に制服効果だったとして、そんなものはそう長くは続かない。
 この学校に限ったことではないが、口を開けば「文武両道」というワンパターンをそろそろ卒業しないか。

 いや、言うのは構わない。
 構わないが、そこまで言うなら結果を出してもらおうじゃないか。

 今春は国公立75件(現役68件)で過去最高。
 立派な結果だ。
 だが「文」を謳うなら100の大台に乗せないと。
 浦和西(58件)、川口市立(42件)を上回っているが、蕨(109件)には遠く及ばない。

 早慶上智は蕨39件、浦和西22件、川口北18件。
 MARCHは蕨339件、浦和西240件、川口北197件。
 校風の違いはあるが進学実績で選ぶならこの順となる。
 どこかで一番とろう。
 
◆蕨は一年でばん回
 の落ち込みは一年限りだったようだ。
 昨年度1.68倍と落ち込みが激しかった。仮に今回が1.7~1.8倍程度までの回復だと長期低落の始まりかと心配になるが、今のところその兆候は見られない。
 
 2017年度 2.61
 2018   1.88
 2019   1.87
 2020   1.99
 2021   1.94
 2022   1.84
 2023   1.68
 2024   1.92

◆外国語科はどこへ行く
 蕨の課題は外国語科だろう。
 今回も希望者40人でジャスト1.00倍。最終的には「どうしても蕨に入りたい」生徒が、倍率の高い普通科から回って来るから定員を割ることはない(蕨は普通科と外国語科との間で第二志望を認めていない)。
 ただ、それは外国語科を熱望した結果ではなく、蕨に入りたいのである。こうした選ばれ方で、はたして外国語科としての存在意義はあるのだろうか。そのあたりが問われているのではないか。

 外国語科は7校に設置されているが、今回調査で春日部女子・越谷南・坂戸・草加南の4校は定員割れ状態である。
 外国語科全体倍率は1.04倍であるが、これは唯一2クラス募集の和光国際が引き上げた結果であり、和光国際を除く6校だと0.90倍となる。
 今回、普通科2.06倍と人気の高い越谷南でさえ外国語科は0.93倍と定員割れ状態なのだ。

 外国語科が再び脚光を浴びることはあるまい。
 外国語科専用棟を建設するなど設備投資も行ってきたが歴史的役割は終わった。
 そう簡単に潰すことはできない数々の事情はあろうが、希望調査の数字を見れば、答えは明白だ。
 普通科改編と絡めながら、新たな道を模索することになろう。

◆春日部の1.18倍は低すぎ
 春日部は本来ここで取り上げるような学校ではないが、ここ数年の低迷からすれば今回の1.18倍は大きな前進だ。

 2017年度 1.02
 2018   1.13
 2019   1.16
 2020   1.11
 2021   0.96
 2022   1.06
 2023   0.99
 2024   1.18

 春日部は、隣県勢という隠し玉があるので、県内生のみ対象の進路希望調査では低い数字であっても最終的には1.3倍程度まで上がる。
 今回も同様となるだろう。
 しかし、県を代表する旧ナンバースクールとしては、隣県勢の力を借りずとも1.2倍、1.3倍を当たり前に出せる学校であって欲しい。

◆高齢化進む春日部市
 春日部市は、人口で言えば、さいたま・川口・川越・所沢・越谷・草加に次ぐ7番目の都市である(僅差で上尾が続く)。
 高校も、春日部を筆頭に春日部女子、春日部東、私立の春日部共栄と揃っている。
 唯一気がかりなのは、上位の他市に比べ、高齢化率が高いことだ。

 庄和町と合併後の平成17年242.934人をピークに人口は減り続け、現在231.726人。
 (この中に、住民登録されているというクレヨンしんちゃん家族が含まれているかは不明だ)

 春日部市は、65歳以上の人口比率が31.3%と高く、14歳までの年少人口比率が10.3%と低い。
 幸い、埼玉・越谷・草加など「若い町」と東武線で繋がっているので、高校としては市の衰退の直撃は避けられるが、10年先を考えると厳しい状況に置かれている。

◆選ばれない理由がない伝統校
 春日部の進学実績は言うまでもなく超優秀だ。
 国公立は現浪で157件、現役だけで106件。
 東大4人をはじめ、北海道から九州までの旧帝大、東工、一橋と難関国立全制覇。
 さらに早慶だけで100件超え。

 川越や熊谷と違って、駅からも近く、たったの1分。
 校舎も県立とは思えない綺麗さ。
 100年を超す伝統校で、OBも多士済々。
 選ばれる条件は揃っていると思うのだが。

 このシリーズ、今回でいったん終了である。