ある人から「~についてどう思うか」と尋ねられ、返答に困っている。
質問者が私を困らせようとしているわけではないのは分かっている。
また、何らかの答えを引き出して、それを切り取って悪用するつもりではないことも分かっている。
それにしても「~についてどう思いますか」だけではね。
とりあえず「質問の意図が分からないので、お答えは差し控えます」とだけ返しておいた。
たとえば昨日、埼玉県の公立高校入試改善案が出されたわけだが、日頃から付き合いがあり、以前に何度がそれについて意見を交わしたことのある先生から「改善案についてどう思いますか」と尋ねられたら、何とか答えをひねり出すことはできる。
お互いの立場が分かっており、共有されている事実もあるので、質問の意図が直ちに読み取れるからだ。
塾の先生であれば、塾業界への影響について意見を聞きたいのだろう。
公立や私立の先生であれば、受験市場がどう動いて行くかについて意見を聞きたいのだろう。
だから、「どう思いますか」と尋ねられたら、相手が求めている方向で意見を述べることが可能だ。
だが、同じ先生からでも、「今の政治と金の問題についてどう思いますか」という質問だったとしたら、「?」と思う。
オマエ、突然そんなこと聞いてどうする。
そんな話、今まで一度もしたことないじゃないか。
こんな時は、「それはそうと」とか「それよりも」とか言いながら話題を変えるか、どうとでも取れる適当な答えを返すしかない。
今回のような「どう思うか」という質問に対する一つの反撃方法は、「あなたはどう思う」と聞き返すことだ。
尋ねる方が何にも考えていないのに、なんでこっちだけ頭を使わなきゃならないんだ。
自分の頭を使わないで他人にだけ頭を使わせようなんて変だろう。
まず自分の頭を使えよ。
その上で、「自分はこう思っているんですが、あなたはどう思いますか」と聞いてこい。
そうじゃないとコミュニケーション成立しないだろう。
よく「で、あなたはどう思う」と、質問を質問で返してくるやつがいるが好きではない。
部下が「どうしたらいいんでしょう」と困っているのに、「キミはどう思うんだ」と上司に言われたら、胸糞悪い。
「それが分からないから聞いてんじゃねえか」
最近は今までにも増して、「質問力」みたいな本がたくさん出ているし、セミナーなども多い。
たぶん、セミナー講師に「質問で部下を育てなさい」などと言われ、それを鵜呑みにしている輩が多いのだろう。
質問の仕方次第で、部下や生徒が前向きになったり、成長したりするのは事実だが、ただ質問すりゃいいってもんじゃない。
言っておくが「キミはどう思うんだ」は質問でも何でもない。
むしろ恫喝に近い。
「どうしたらいいんでしょう」と聞いてくる部下は、自分でも考えがまとまらないのだ。
自分がどう思っているのか自分自身でも分からない。
そういう状態にある部下に対して、「キミはどう思う」は愚問中の愚問だろう。
答えは教えてやるより、自分で出させた方がいい。
その助けになるのが質問だ。
人はだいたいにおいて自分の中に答えを持っているものだ。
だが、その在りかが見つからない。
じゃあ探すのを手伝ってあげよう。
これが上司というものだ。
その手段として質問がある。
質問が良ければ、部下はそのうち自身の力で答えにたどり着くだろう。
自分で得た答えは自信になるし応用が利くが、もらった答えはすぐに忘れる。
上司は自分の中にある正解を部下にも求める。
組織としてそれは仕方ないにしても、そこに至るプロセスはよく考えたほうがいい。
上司「キミはどう思う」
部下「・・・・だと思います」
上司「いや、そうじゃない。もっとよく考えろ」
部下「では、こうですか」
上司「キミは考えが浅い、もっと深めろ」
部下「だったら、こうですか」
上司「まだ甘い、もう一度考え直してみろ」
これはどうみても拷問だ。
混乱している部下の頭の中を整理してやる質問がないからね。
自信喪失している部下が気を取り直すような質問もないし、新たな気づきにつながる質問もない。
質問は武器である。
自身や味方を守る武器であるが、使い方を誤ると凶器となり他人を傷つけることになる。
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