第105回全国高等学校野球選手権大会は、神奈川代表・慶応の優勝で幕を閉じた。
 正直なところ埼玉代表・浦和学院が初戦敗退した時点で興味を失い、どこが勝ってもいいやという気持ちで遠くから眺めていた。
 その程度の高校野球ファンである。

 神奈川県大会決勝戦では微妙な判定があり話題になった。
 結果は6対5で慶応の勝利となったわけだが、8回を終わった時点では5対3で横浜がリードしていた。

 慶応最終回の攻撃は、無死一塁の場面で二塁ゴロ。当然横浜は併殺狙いに行ったが、その際遊撃手の足が二塁ベースを踏んでいなかったとされ、打者、走者共にセーフの判定。
 そしてその後、逆転スリーランが飛び出し、慶応が勝利を収めることとなった。
 勝負の世界で「タラレバ」は禁物であるが、もしあの場面でアウトを一つでも取っていれば、横浜が神奈川代表として甲子園の土を踏んでいたかもしれない。
 まあ、野球に限った話ではないが、一つのプレー、一つの判定で流れが変わり、それが勝敗を左右するのはよくあることだ。

 毎年選手が入れ替わる高校野球で勝ち続けるのは容易ではない。
 そんな中、2年連続で決勝戦まで駒を進めた仙台育英は見事だった。
 関西勢がベスト8に1校も残れなかった一方、東北勢が仙台育英、花巻東、八戸学院光星と3校も残ったのは珍しいことだ。
 来年は関西勢の逆襲が見られるかどうか。

 慶応は107年ぶりの優勝だという。
 前回優勝は1916年(大正5年)。
 戦前であるから旧制中学校が今の高等学校に当たる。
 この時は慶応普通部(東京代表)としての優勝だ。

 参加した人も見た人もほぼ現存していないない100年以上前の話を持ち出してどうするという話だが、マスコミの大好物なので仕方ない。
 「〇年ぶり」の「〇」は数が大きければ大きいほど美味しいのだ。
 「初」、「〇年連続」、「〇年ぶり」、このどれかに当てはまれば派手な見出しが打てるというものだ。
 当の選手にとって、「初」だろうが「連続」だろうが「ぶり」だろうが、そんなことはどうでもいい。
 今、この瞬間の勝利が嬉しいだけだ。

 仙台育英の須江航監督は埼玉県出身で、大学卒業後は埼玉県で高校教員を目指していたというが、縁あって仙台育英の監督に就任した。
 まだ40歳の若さということもあるし、いずれ故郷埼玉で指揮を執ることもあるかもしれないなどと勝手に思っている。
 昨年は「青春って、すごく密なので」の名言を残したが、今年は「人生は敗者復活戦」とこれまた話題になりそうな言葉を放った。
 そうだね。
 人生勝つこともあれば負けることもある。
 負けたらそれで終わりじゃなく、また機会は巡ってくる。
 グランドでの振る舞い、インタビューでの受け答え。
 何となく栗山英樹・侍ジャパン監督に通じるものがあるような気がする。
 令和の新しい指導者像ということか。
 われわれ昭和世代には真似できないことだ。
 少なくとも自分には無理。

 以上、甲子園雑感。