文部科学省が「スクールロイヤー」と呼ばれる弁護士を全国に約300人配置する方針を固めた。概要は次のとおり。

 1 学校現場では、いじめその他で法的なアドバイスが有効な場面が多いので、弁護士が早い段階から関わり、訴訟など状況が深刻化する前の解決をめざす。
 2 弁護士は、各地の教育事務所などに拠点を置き、市町村教委からの相談を受ける。
 3 全国に約300人を配置する。
 4 2020年度からのスタートを目指す。
 5 経費は年間約4億円を見込み、地方交付税を財源に充てる。

 最近過剰気味で仕事が減っていると言われる弁護士に新しいお仕事を用意しましたということかな。
 一生懸命勉強して弁護士になっても食って行けないぞというのでは、人材が集まらない。この程度で一気に解決とはならないが、弁護士の活躍の場を広げてやるのはいいかもしれない。

 学校の校長や教頭、あるいは教育委員会の主事になるには登用試験を受けなければならないが、その際重視されるのが教育関係法規である。したがって、かれらは世間の人々が思う以上に法律には精通しているわけだが、所詮は素人であるから、専門職たる弁護士がバックアップしてくれれば心強い。

 以上は考えられるプラス面。

 弁護士は法律のプロではあるが、学校や教育については素人である。学校における諸問題は法律的に解決すればそれでよしというものではない。学校や教育に詳しい弁護士をどのように選抜するか、あるいはどのように養成するかについては課題が残る。

 弁護士は、いわば教育委員会側の顧問弁護士という立場である。いじめを受けたり、それが原因で不登校になっている生徒や保護者側に立ってくれるわけではない。
 やや乱暴な言い方をすれば、「こっち(教育委員会)には、弁護士がついてるぞ」という形であるから、いじめなどの被害者側も対抗上、弁護士を立てなければならなくなる。
 そうなると、ここでまた弁護士のニーズが発生するわけで、弁護士側にとっては悪い話ではないが、被害者側にとっては救済策でも何でもないということになる。
 これは、個々の先生にとっても同じことで、スクールロイヤーはあくまでも教育員会の顧問弁護士、もしかしたら代理人であって、先生の側についてくれるかどうかは疑問だ。このことは、企業の顧問弁護士を考えてみれば分かるだろう。

 目的地はどこか。
 決まってるじゃないか。子供を救うことだ。先生を助けることだ。
 この制度がその一助になることを祈ろう。