令和2年度埼玉県公立高校入試では、国語の大問ごとの配点が久しぶりに変わった。大きく変わったのは大問5(作文)の配点で、従来の16点から12点に減り、この4点分は大問1と大問3に1点ずつ、大問2に2点という形で割り振られた。

 この結果、新たな配点は次のようになった
 大問1(長文読解・小説) 25点→26点 1点増
 大問2(漢字・文法等)  22点→24点 2点増
 大問3(長文読解・論説) 25点→26点 1点増
 大問4(古典)      12点=12点 変わらず
 大問5(作文)      16点→12点 4点減

◆10年ぶりの配点変更
 作文に16点が割り当てられるようになったのは平成22年度入試からである。この年から各教科の満点が100点になった。前年(21年度)までは各教科40点満点で、国語ではこのうち8点が作文に割り振られていたから、配点割合は20%から16%に減じられたわけである。
 以来、平成31年度までの10回の入試では、この割合が変わることはなかった。

◆作文は12点でもまだ高い
 4点の減少は大きな変化かもしれないが、近県の様子を見てみると12点の配点は、それでもまだ高い方である。
 東京都 10点
 千葉県 10点
 茨城県 10点
 群馬県 10点
 栃木県 20点
 神奈川県はなし。栃木県の20点を例外と見れば、他都県は10点であるから、埼玉県の12点はそれに近づいただけと言える。

◆条件にも変化
 字数・行数については、これまでの「13行以上、15行以内」から「11行以上、13行以内」と、やや少なくなった。解答用紙の1行文字数は15文字であるから、文字数で言うと30文字程度の減少。
 2行少なくなった分、所要時間を短縮できたかというと、これはあまり変わらなかったのではないか。

 また、段落・構成については、これまで「段落や構成に注意して」という大ざっぱな条件だったものが、「二段落構成とし、」と段落数を限定した上で、構成に関しても「第一段落では、あなたが資料から読み取った内容を、第二段落では、第一段落の内容に関連させて、」と、具体的な条件を示している。
 この点については、塾の先生方が指導されてきた内容が明文化されただけであるから、受験生に戸惑いはなかっただろう。

 分量(文字数・行数)が減り、条件をつけたことで、多少採点がしやすくなったかもしれない。

◆平均点への影響
 満点こそ少ないが比較的点数が取りやすかった作文から、やや点数の取りにくい長文の記述問題に点数が移ったのは、平均点を下げる要因になり得る。ただし2点だ。
 残りの2点は、大問2の「拝啓」という頭語の対し、結語「敬具」を答えさせる、いわゆる知識問題に割り振ったわけだが、これが中学生にとって難しいのか易しいのかは、私には判断がつかない。
 作文は書き方のパターンを覚えてしまえば誰もがそこそこの点数が取れるが、4点が移った先は、知識と読解力と表現力が問われるので、今回の配点変更により、点差は付きやすくなったのではないか。