少し気が早いが、進路希望調査(10月1日現在)について一度書いておこうと思う。
 埼玉県教育委員会から調査結果が発表されるのは、昨年(10月31日)の例からみて10月30日(金)と予想される。
 結果分析はその時に書くので、本日は予習編である。

1 中学校卒業予定者数は減少
 中学校卒業予定者数の減少は既に明らかであり、公立募集人員もそれに伴い減少させている(20校で各40人減)。
 7月段階では来春の卒業予定者数は6万1057人である。
 なお、学校基本調査速報(5月1日現在)によれば、中学2年・1年の数は、今の3年生よりそれぞれ約1500人多く、やや回復に向かう。
 しかし、その後再び減少に向かい、今の小学3年までは何とか6万人台をキープしそうだが、小学2年からは6万人を割る見込みである

2 高等学校等進学希望者数の割合は上昇するか
 高等学校等進学希望者総数(具体的な希望校未定者含む)の割合は、昨年は99.2%で過去最高だった。
 今年はさらにそれを更新するか。そこに注目しておこう。

 なお、高等学校とは、
 全日制
 定時制
 通信制
 高専・中等教育
 特別支援
 以上5つを含んだ言い方である。

 また、高等学校等に含まれないのは、
 専修学校等
 就職
 その他(未定など)
 以上3つだが、実人数で500人程度、割合では1%以下である。

 高等学校等への進学は希望しているものの、希望校未定という者が昨年は1418人(2.2%)いた。
 だいたいこのくらいの人数は例年いるものだ。
 もしこの数字が大きく増えるようなら、コロナによる進学イベントの中止や学校説明会の中止・延期により、学校選びが遅れているとみることができるだろう。
 個人的には極端に増えることはないとみているが、具体的な学校名が書けない生徒が予想以上に多かった場合、高校側は募集戦略の修正を図ったほうがいい。

3 全日制希望者は引き続き低下するか
 高等学校等進学希望者数の割合は増加したが、全日制希望者の割合は低下していたというのが昨年の結果だった。
 全日制希望者の割合は引き続き低下するのか、上昇に転じるのか。そこに注目しておこう。
 なお、昨年は全日制の割合が下がった分、通信制の割合が上がったわけだが、この傾向が続いているのかどうかも見ておこう。

 かつて通信制は消去法的に選択する生徒が多かったが、最近は積極的に選択する生徒も増えているという。
 「オンライン授業なら通信制でいいじゃん
 そんな考え方が広まって行くのかどうか。ここも注目点の一つだ。

4 県外(全日制)希望者は今年も増えるか
 昨年は、全日制希望者のうち、県内希望者の割合が低下し、県外希望者の割合が上昇した。
 県外希望者の多くは都内私立である。
 大学入試改革の影響で、大学附属校志向が高まったという事情もありそうだ。

 ただ、今年は新型コロナがあった。
 満員電車で都内に通学することへの不安があるかもしれない。
 県外(主に都内私立)希望者の割合が引き続き上昇するのかどうか。ここにも注目しておきたい。

5 県内私立希望者はさらに増えるか
 昨年は全日制(県内)のうち、公立希望者の割合が減り、私立希望者の割合が上昇した。
 この傾向が続くのかどうか。これも注目点だ。
 
 公立希望
 前々年46.961人(73.4%)
 前年 44.945人(71.2%)
 今年 ?
 
 私立希望
 前々年8485人(13.3%)
 前年 8971人(14.2%)
 今年?

 次の調査(12月15日現在)では、公立は70%を割るだろう。
 昨年は44.460人(67.3%)まで下がった。対して私立は10.713人(17.0%)まで上がった。
 よって私の注目点は、今回調査(10月1日現在)の段階で70%を割るかどうかである
 73.4%、71.2%と来ているから、このペースで行けば70%を下回る可能性が高いのである。

 国は私立授業料実質無償化をアピールしている。
 県も私立助成金充実をアピールしている。
 こうした学費面でのハードルが下がったのことが私立希望者増加につながっていると思われる。
 加えて、今般のコロナ禍でもオンライン授業対応は私立の方が早かったという印象を多くの人が持っている。
 印象だけでなく実際にそうだった。

 これらを総合すれば、今のところ、私立希望者が減少する理由は見つからない

6 みんな大好き倍率予想
 あくまでもこの時点(10月1日現在)での倍率の予想である。第2回調査や実際の出願時の倍率の話ではない。
(1)2倍超えが予想される学校
 ▼東部地区
 越ヶ谷
 ▼西部地区
 川越南 市立川越(普)
 ▼南部地区
 上尾(普) 浦和西 大宮(普・理)
 市立浦和 川口市立(普・スポーツ)
 大宮北(普) 蕨
 ▼北部地区
 なし
 
 いつもの顔ぶれである。
 大宮北、蕨は微妙だが、高倍率になるのは確かだ。
 次の第2回調査(12月15日現在)でも2倍を維持しそうなのは市立浦和、浦和西ぐらいで、他は2倍を割るだろう。

(2)今回で最終倍率が読める学校
 第1回から第2回、そして実際の出願と徐々に倍率が低下する学校と逆に上昇する学校がある。
 それに対し、ほぼ変化のない学校もある。
 別学の伝統校はだいたいこのパターンだ。
 定員割れ必至の学校も、変化がないと言えるが、ここでは別学伝統校を見て行こう。

 昨年の例である。
 倍率ではなく人数で見てみる。
 出願は志願先変更後の確定志願者数である。

 浦和   1回579人 2回551人 出願534人
 浦和一女 1回464人 2回500人 出願495人 
 川越   1回551人 2回520人 出願520人
 川越女子 1回515人 2回500人 出願497人
 春日部  1回398人 2回415人 出願478人
 熊谷   1回359人 2回335人 出願342人
 熊谷女子 1回361人 2回389人 出願374人

 1回目から2回目、2回目から出願のそれぞれの差は、
 浦和   -28 -17
 浦和一女 +36 -5
 川越   -31 ±0  
 川越女子 -15 -3
 春日部  +17 +63 
 熊谷   -24 +7
 熊谷女子 +28 -15

 春日部が出願時に増えるのは隣接県協定による県外からの受験者の影響がある。進路希望調査は埼玉県内の中学生のみが対象であり、県外中学生の希望はカウントされていない。

 1回目と出願の差を見て見ると、
 浦和   -45
 浦和一女 +31
 川越   -31
 川越女子 -18
 春日部  +80
 熊谷   -17
 熊谷女子 +13

 各校とも定員は360人である(熊谷・熊谷女子は320人)。
 ということは、希望者が36人増えれば倍率は0.1ポイント上がり、36人減れば倍率は0.1ポイント下がる計算だ。
 よって、春日部を例外とすれば、1回目調査と実際の出願時の倍率の差は、プラスマイナス0.1ポイント以内に収まるだろうと予想できる。
 もちろん、こうした傾向は、別学伝統校以外でも多かれ少なかれ見られるものである。

(3)定員減の学校はどうなる
 卒業生数の増減により各校定員を調整しているわけだが、定員減の学校は、定員割れかそれに近い状況である場合が多い。

 昨年は普通科16校で定員減(40人減)を実施したが、その結果、第1回調査で1倍超えとなったのは、杉戸とふじみ野の2校だけだった。もちろん、実際の出願では1倍超えとなったケースは多いが、第1回調査時点で見ると、定員減でもなお1倍を割っている学校が多いのが実情だ。

 今年、普通科で定員減を実施するのは、16校(15校+1コース)である。
 川口市立(普・スポーツ科学)熊谷西は、元々定員割れではなかったので、定員減の分だけかなり高倍率になりそうだ。
 上尾鷹の台桶川志木は昨年も第1回時点で1倍を超えているので、今回は倍率上昇の可能性が高い。
 春日部女子庄和秩父羽生第一三郷八潮は、定員減があってもこの時点で1倍を超えられるかどうか微妙なところだ。
 越生児玉新座柳瀬妻沼は、定員減でもこの時点で1倍を超えるのは難しそうだ。
 
 以上。
 このように予習をしておくと、調査結果を見る時、視点が定まる。
 今回は、あくまで私個人の注目点を示したものなので、皆さんはそれぞれ注目点を設定されればいいと思う。