今年1月、本ブログに「埼玉県公私立高校の大学進学率、公立は浪人覚悟は本当か」という記事を書いた。あれから1年近く経ったが、いまだにこの記事を読みに来る人が絶えないところをみると、やはり皆さんの関心事の一つなのだろう。

◆浪人はしないほうがいいが
 浪人は出来ればしないほうがいい。費用面で考えれば、さまざまなケースがあろうが1年間に100万円ぐらいの授業料・講習料がかかる。これだけの金があれば、海外留学や世界一周旅行が出来るかもしれない。クルマは無理でも高性能のパソコンは買えるし、本だったら1000冊は軽く行ける。
 そう考えると、受験勉強だけのために多額の費用と膨大な時間を費やすのは本当にもったいない。

 が、それだけの費用と時間をかけても、自分が一番望んでいた大学に行けたり、ワンランクかツーランク上の大学に行けたりすれば、長期的に見てメリットの方が多いと考えることもできる。
 まあ、レベルが高く、ブランド力もある大学に現役で入れればそれがベストに決まっているが、事はそんなにうまく運ばない。
 一番望んでいた大学に現役で受からなかった場合、セカンドベストに方向転換するか、浪人して再チャレンジするか、簡単には結論が出せない問題だ。

◆公立各校の浪人率を見てみる
 今回も、前回同様埼玉新聞社が各校に対して行ったアンケート調査の結果を利用させてもらう。今年5月に実施したものだ。
 調査では、卒業生数と大学・短大・専門学校・就職・進学準備・その他の7項目について人数を聞いた。
 このうち、進学準備者数が、いわゆる浪人の数である。
 なお、5月現在のアンケート調査なので、各校がホームページ・パンフレットその他で公表している数字とは多少のずれがあるかもしれない。

◆進学準備(浪人)の割合が高い公立高校 1~10位
※カッコ内は前年
1浦和   56.7%(60.0%)
2春日部  35.6%(47.3%)
3川越   41.3%(45.1%)
4熊谷   41.0%(47.1%)
5浦和一女 21.9%(25.1%)
6大宮   21.7%(26.0%)
7松山   17.2%(18.1%)
8浦和西  16.0%(13.2%)
9所沢   14.5%(21.5%)
10川口北  14.2%(15.7%)

 今春は全体傾向としては浪人率が低い。浪人すれば新制度入試で受けなければならず、それを回避したいと考えた受験生が多かったためと考えられる。
 浦和は60%は切ったものの相変わらず浪人率は高い。

 浦和の大学進学実績は同校ホームページに詳しく出ている。
 2006年度まで遡ることができる。
 興味のある方は、ぜひそちらをご覧いただきたい。
 浦和高校の大学合格実績
 国公立の合格件数は128。これは「人」と読み替えてもいいだろう。卒業生数が365人だったから、ほぼ3分の1が国公立に現役合格し進学している。
 おそらく、ほぼ全員が現役の時は国公立を受ける。早慶さえもあまり受けない。
 学校全体としてそういう受験スタイルになっている。
 なお浪人の合格件数は131件(≒人)だ。

 前年同様、上位4校はすべて男子校である。私立でも男子校の城北埼玉(40.6%)、川越東(27.5%)、城西川越(20.5%)という状況であるから、浪人率が高いのは男子校に共通に見られる傾向と言える。
 女子校はおしなべて浪人比率は低いが、浦和一女のみ21.9%の高率だ。
 
 国公立(特に旧帝大)や早慶上智の合格件数がさほど多くない所沢や川口北の浪人率が高いのが気になるところである。

◇進学準備(浪人)の割合が高い公立高校 11~20位
11朝霞西  13.9%(15.2%)
12越谷北  13.4%(16.7%)
12市立浦和 13.4%(15.4%)
14所沢北  13.1%(13.2%)
15和光国際 11.9%(8.6%)
16不動岡  11.3%(17.1%)
17熊谷西  11.1%(14.2%)
18豊岡   10.3%(19.0%)
19飯能   10.2%(2.8%)
20朝霞   10.0%(10.9%)
 ここまでが10%超。
 なお、その他の主な学校は以下のとおり。
川越女子  9.9%(14.2%)
大宮北   9.1%(13.4%)
蕨     8.5%(16.3%)

 公立の中で進学校と目される学校は、ほぼここまでに収まっている。
 朝霞西、豊岡、飯能、朝霞あたりが10%超えというのも解せない。
 早慶上智はもちろんGMARCHレベルの合格者も少ない学校がこれでいいのだろうか。

◇難関目指せば浪人率は高まる
 私立は、現浪別や、一貫・高入別のデータを出さない傾向にあり、ホームページなどを見ても割合がよく分からない。
 合格件数だけでなく、これらの割合まで出してもらいたいと常々思っている。
 ただこれは、個人的な要望であり、受験生・保護者にとってさほど興味のないデータということなら仕方ない。
 
 私立でも開智(32.1%)、栄東(25.3%)など、トップレベルの進学校となると浪人率は高くなる。東大や旧帝大、あるいは医学部医学科を目指す生徒が多くなれば、ある程度浪人率が高まるのは止むを得ないだろう。
 以上、前回と同じ結論になるが、単純比較では「私立なら現役、公立なら浪人」というほどの極端な差は見られない。
 ただし、最上位校を除いたデータで見ると、私立の方が浪人率は低く、合格している大学のレベルも高いと思われる。
 そのあたりは、別の機会に書くことにする。