日曜日だというのに塾の先生から問い合わせ(質問)があった。電話じゃなくLINEでというところが気が利いている。それに「お休みのところ申し訳ない」と書いてあったから許せる。
 質問の内容。
 「塾生からの話。国語期末テストで2020年度の入試作文が出題された。棒グラフの上から4つ目の意見が自分と同じだと書いたところ大減点された。生徒が学校の先生に理由を尋ねたところ、多数派の意見と同じだとすべきだからという返答だった。実際の入試でも多数派の意見と同じと書かないと減点されるのですか? また、友達の中に意見の内容が生意気だからという理由で大きく減点された子がいるとも言っていましたが、そんなことがあるんですか?」

 まず、中学生の先生に言いたいが、入試問題をそのまま出しちゃいけないな
 手抜きせずオリジナル作りなさいよ。

◆昨年の作文は、こんな問題だった
 ご存知ない方のために説明しておくが、2020年度埼玉県公立入試の国語作文はこんな問題だった。
 資料として埼玉県の魅力についての調査結果(グラフ)が示され、それをもとに、「地域の魅力」について自分の考えを述べる問題。

 資料①は埼玉県に魅力を感じるかの調査結果(グラフ)
 「魅力を感じる」13.2%
 「どちらかといえば魅力を感じる」41.3%
 「どちらかといえば魅力を感じない」21.7%
 「わからない」6.4%
 「無回答」1.7%
 資料②は埼玉県で魅力を感じるものについての調査結果(グラフ)上位5項目
 「住みやすさ」67.9%
 「交通の便」53.0%
 「山、川などの自然が豊か」32.6%
 「地域の人の良さや優しさ」24.6%
 「魅力的な祭り、伝統芸能など」11.6%

 上から4つ目ということは、当該生徒は「地域の人の良さや優しさ」が自分の考えに近いと感じ、自分の体験を踏まえて「地域の魅力」について書いたものと思われる。
 ところが、中学校の先生は、「住みやすさ」を選んで書くべきだからとして大幅に減点した。
 実際の入試で、そんなバカな採点があるはずないだろう
 「住みやすさ」を挙げる人が多いが、自分は「人の優しさ」の方に魅力を感じるで全然構わない。むしろ、そっちが重要だと主張しても構わない。
 何度も言っているように、国語作文は、資料を正確に読み取った上で(資料を踏まえて)、条件に沿って、筋の通った正しい日本語で、自分の考えを述べるという問題だ。
 資料のどの意見に同調するか(賛成するか)は採点とは無関係だ。

 もう一つ。
 生意気だから減点という話。
 完全な主観でしょう。高校の先生が感情に基づいて採点するはずがない。

 ということで、中学校の先生の採点は、間違っており、生徒を混乱に陥れるものだ。

◆塾長先生に、私からのアドバイス
 さてそこで。
 私は、問い合わせのあった塾の先生にアドバイスした。

 中学校の校長先生に電話して尋ねてみなさい。
 ただし、抗議(クレーム)ではなく、質問だ。私に対するのと同じに、問い合わせをするのだ。
 昔の採点と、今の採点が違う可能性だってあるかもしれないじゃないか。

 そして、電話する前に3つのことをしなさい。
 1 答案を自分の目で確認する
 2 改めて県発表の「採点の手引き」を熟読する
 3 もう一度生徒の話をよく聞く。

 生徒の話をもう一度聞くというのは、子供たちはしばしば自分に都合のいいように先生の話を脚色するものだからだ。
 先生が嫌いというのが元々あって、事実を捻じ曲げている可能性も捨てきれない。
 「このことが事実なら、つまり中学校の先生の指導が正しいとすれば、私(塾長)の指導が間違いということだから改めなければならない。仲間の塾長にも教えてあげなければならない。テレビや新聞に出ている先生にも訂正を求めなければならない。場合によっては校長先生に問い合わせてみようと思っている。だから、もう一度詳しく話を聞かせてほしい」
 と、このように言いなさい。
 子供の話を鵜呑みにして学校に怒鳴り込んでくる親もいるが、塾の先生がそれをやっちゃいけない。

 今回の一件、生徒が話を盛っているかもしれない。
 いろいろ言われた中で、本人的に一番気に入らなかった部分を誇張しているかもしれない。
 中学校の先生は、「ここは話の筋が通らない。ここは文法的に変だ。ここは・・・」と言った後に、「ついでに言えば、多数派に乗っかっておいた方が無難だ」と言ったのかもしれない。
 感情を排除し、事実を一つ一つ積み上げて行って真実に迫ろう。