反対運動は面白い。運動に参加している人も面白いかもしれないが、新聞ネタとして面白い。
 で、このような記事になった。
市立中の隣に私立中誘致、「経済力・教育格差が浮き彫りに」と保護者ら反対(読売新聞オンライン2月5日)
 

 舞台は千葉県流山市(ながれやま)である。
 埼玉県西部や北部の方には分かりにくいと思うが、武蔵野線では埼玉県「三郷駅」の隣が千葉県「南流山駅」である。
 つまり、江戸川をはさんで埼玉県とは隣り合わせ。
 そんな位置関係もあり武蔵野沿線の吉川市や三郷市からは千葉県の高校に通う生徒も多い。(もちろんその逆も多い)
 ただ今回舞台となっている流山市には私立高校はなく、もう少し先の松戸市や柏市などの学校が選ばれる。
 
 流山市に東洋学園大学のキャンパスがあった。
 ちなみに、「東洋」と言っても東洋大学とは関係はない。
 私が現役教員だった頃は、東洋女子短大と言っていた。
 当時、女子の場合、四年制より短大の方が難しいと言われていた時代だったこともあり、なかなかの人気であった。
 が、時代は変わり、短大は次々に四大に改組され、東洋女子短大は東洋学園大学となった。

 私は教員時代、一度だけ流山キャンパスに行ったことがある。
 どうやって行ったのかは記憶にない。 
 今はつくばエクスプレスがあるので、多少アクセスは良くなったかもしれないが、通学には苦労しそうな場所だ。
 東洋女子短大(現東洋学園大学)は、文京区本郷というバリバリの文教地区に位置する大学だが、新学部・新学科を作るには都心を遠く離れるしかなかったのだろう。

 で、東洋学園大学はしばらくは流山に一部の学部をおいていたが、学部は本郷に集約し、スポーツ施設として残した。
 が今回、東洋学園大学が完全撤退し、その跡地を流山市が買収するところとなった。
 つくばエクスプレス開業で人口が急増し、市立小学校がパンク状態になったため、小学校を現中学校に移設し、中学校を大学跡地にという計画だ。
 ここまでは特に問題はなさそうだ。

 買収したのは大学跡地5ヘクタール。
 これを全部市立中学校にあてれば事は簡単だった。
 しかし、市立中学校に3ヘクタールをあて、残り2ヘクタールを暁星国際中学校に賃貸する計画が明らかになり、騒ぎが起きた。
 暁星国際中学校高校は千葉県木更津市にある私立学校だ。
 東京・千代田区にある暁星とは別法人である。

 新聞報道によると反対派の主張は、「制服や給食、学費、教育方針が違う公立と私立が隣り合うのは問題」というものである。
 はっ?
 ちょっと何言ってるか分かんない。

 制服や給食、学費、教育方針が違う。
 これはまあ、その通りだ。
 が、それが隣り合うことにどんな問題があるのか。
 都内じゃ当たり前のことだし、埼玉だってちょっと思い出しただけでも春日部共栄の隣に市立大増中があるし、開智の隣に市立桜山中がある。
 それで何か問題が起きていると聞いたことはない。
 まあ、向こうは向こう、こっちはこっち。
 いちいち聞いてはいないが、そんなものだろう。

 要するに格差という言葉を使いたいだけだろう。
 「保護者と地元住民らは『流山市の公立学校をよくする会』を結成し、署名活動を始めた」そうだ。
 よくあるパターンだ。
 
 公立学校をよくするのは、それ自体は大いに結構。
 だが、私立中学校を排除したって、それで公立学校がよくなるわけじゃない。
 むしろ逆だろう。
 学校をはじめ文化施設が集積すれば、文教地区として認知され、街のイメージ向上につながる。
 大学が去った今、ついでに高校も来て欲しいくらいだ。