銀行に現金を下ろしに行った。
って、それがどうしたという話なのだが、ここ数年、銀行に行く機会がめっきり減った。
ATMは比較的よく使うが、窓口に行くのは年に数回といったところだろう。
ネットで取引できるシステムが普及したので、実店舗に行く必要がないのだ。
以上は仕事(会社)としての話だが、個人でも同様だ。
預け入れも引き出しも振り込みは、全部ネット上で完結する。
それに、そもそも日常生活において現金というものを持ち歩かない。
実際のところ、いざという時のために財布に1万円札1枚、千円札10枚くらいは入れているのだが、一向に減る気配がない。
電子決済でほぼすべてが完結するからだ。
システム障害が発生すれば一大事だが、滅多に起こるものではない。
明日15日は2か月に1回の年金支給日なのだが、この日はATMや窓口に長蛇の列ができる。
並ぶのはもちろん年金受給者である年寄りだ。
あの人たちは一体何のために並んでいるのか。
通帳に記帳して入金を確認したいのか。
それとも現金として引き出すのか。
どっちにしても時間の無駄としか思えないが、よくよく考えてみれば時間だけはたっぷり持っている人たちだ。
◆自分の金を自由におろせないのか
前置きが長くなったが、今日ちょっとした必要があり、現金を引き出すために銀行に行った。
会社の金ではなく、個人預金の方だ。
ATMでは一日の限度額が50万円というのは分かっていたので最初から窓口に向かった。
順番カードの所で預金からの現金引き出しだと伝えた。
金額によっては身分証明書が必要だと告げられたので、準備してあると答えた。
順番はすぐに回ってきた。
窓口係の女性が引き出し額を尋ねられたので、ウン百万円だと伝えた。
すると、「失礼ですが、お引き出しの理由は?」と尋ねて来た。
噂には聞いていたが、これか。
テメエの金をいくら引き出して、それをどう使おうと勝手じゃねえか。
なんでアンタにそれを言わなくちゃいけねんだよ。
と、ここで腹を立ててはいけない。
年寄りには年寄りらしい振る舞いというものがある。
近くで「なかなか順番が回ってこないじゃないか」と喚き散らしているジジイがいたが、そういう時間帯に来るオマエが悪い。
窓口の女性だって、別に個人的興味で聞いてるわけじゃない。
犯罪防止のため、当局からのお達しがあり、本社からの指示があり、支店長から厳しく指導され、それを実行しているに過ぎない。
今は、そういう時代なのだ。
だから、ここで「私の勝手でしょう」などと言い張るのは、はしたない行為なのだ。
長く生きてるのに、そんな簡単な道理が分からん年寄りが多いのは嘆かわしい。
◆答え方を考えておくべきだった
現金の使途を尋ねられるのは想定内なので、答え方を準備しておくべきだった。
私は咄嗟に、「死期が近づいたので墓を購入しようと思って」と答えた。
もちろんこれは嘘で、我が家の墓はとうの昔からあって父母が眠っている。昨日も墓参りに行ってきたばかりだ。
それに加え、自分の死後数十年先になると思われるが、墓仕舞いのことも考え永代供養墓まで用意してある。
三つも墓は要らん。
窓口女性から、「少しお時間いただけますか」と言われ、別の順番カードを渡された。
待ち時間の間に、「女と別れるので手切れ金ですよ」と答えたらどうなったろうとくだらんことを考えていると、すぐに呼び出しがあった。
今度は少し離れた別の窓口に案内された。
相手は二人に増えていた。
そして、「お墓のご購入ということですが、見積書とか請求書などお持ちでしょうか」と聞いて来た。
そんなもんあるはずねえだろう、作り話なんだから。
こいつはどうも話が長くなりそうだ。
次の予定が控えており、あまり長居はできない。
そこで私は、突然「現金引き出しはやめます」と切り出した。
「スマホに御行のアプリが入っているので、それで振り込むことにします」
いや、だったら最初からそうしろよ。
なんだけど、これにも一日当たりとか一回あたりの限度額というものがある。
たしか最初に100万円で設定した覚えがある。
不安なのは最大いくらまで設定できるのか、また、設定変更は直ちに機能するのかという点だ。
最大1000万円まで設定できるという。
直ちに反映され機能するかについては、「おそらく・・・」という曖昧な答え。
「じゃあ、今ここでやってみますわ」
私は窓口女性二人を前に、シャカシャカと設定変更操作をした。
「おっ、出来ましたね」と二人に画面を見せると、「出来ましたね」と笑顔を見せる。
二人は、「スマホの操作慣れてますね。私たちよりお上手です」とお世辞を言うが、ちょっと待て。
振り込みは振り込みで危険なんじゃないの。
これだけ振込詐欺が言われてるのに、そっちは注意しないのかよ。
が、余計なことを言って、さらに長引かせるのも馬鹿馬鹿しい。
操作の過程で2回ほどパスワードを入力する場面があったが、そのたびに二人して、横を向いて視線を逸らすのだが、そのシンクロぶりが面白かった。
以上、今日もこれといった教育ネタがないので、雑談でお茶を濁した。
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