第1回進路希望調査は「ただの人気投票」という声がある。
 その意見に控えめに言って半分賛成、半分反対。
 実際のところは3割賛成、7割反対といったところか。

 賛成の部分は「人気投票」。
 調査時期から考えれば、できれば行きたい学校を書いておこうという受験生もいるだろう。
 その意味で、実際の出願には直結しない「人気投票」という見方ができなくもない。

 反対の部分は「ただの」。
 「人気投票」というだけでも事態を軽く見過ぎていると思うが、それに「ただの」を付け加えてしまうと、これはもう全く当てにならない調査結果と言っているに等しい。
 が、もちろんそんな風に考えている先生はいないだろう。
 「ただの人気投票」は、倍率に一喜一憂する受験生の気持ちを鎮静化させるための方便に過ぎない。
 なぜなら過去の動向と照らし合わせれば、最終倍率さえもかなりの制度で予測できるからである。

 さて、そんな中、前年同期と比較して、倍率を大きく下げた学校、逆に大きく上げた学校があるので、今日はそのあたりを見て行こう。

◆倍率を大きく下げた学校
 まず、前年同期と比べ、大きく倍率を下げた学校である。

 川口市立 -1.18
 市立浦和 -0.48
 鳩ヶ谷  -0.42
 川越西  -0.33
 所沢北  -0.25
 熊谷女子 -0.24
 鶴ヶ島清風-0.24
 狭山清陵 -0.23
 浦和   -0.22
 ふじみ野 -0.22
 上尾   -0.20

 以下、北本・越谷東・草加西が-0.18で続く。
 前年度との比較であるから、いわゆる隔年現象もあるだろう。川口市立、市立浦和などは前年までの高倍率の反動だろう。また、鶴ヶ島清風・ふじみ野・越谷東のように定員増の影響を受けることもある。
 よって、ここで問題にすべきは長期的な低落傾向があるかなしかである。

 その点でもっとも心配なのは熊谷女子だろう。
 (年度は入試年度である)
 2017年度 1.19
 2018   1.17
 2019   1.05
 2020   1.14
 2021   1.05
 2022   1.05
 2023   0.99
 2024   0.75

 2018年度までは何とか1.1倍台をキープしていたが、2019年度に1.05倍まで下がった。しかし、2020年度は1.14倍とやや持ち直した。関係者は一瞬安堵しただろう。が、ここが勝負の分かれ目だった。長期低落はこうして始まるのだ。つまり、いったん下がって、持ち直すが、旧には復さないという状況が生まれる。今さらだが、2020年度は最低でも1.17倍、できれば1.2倍台が欲しかった。
 そして2021年度は再び1.05倍となり、以後3年連続で前年度比マイナスだ。これは良くない意味で本物だ。
 はたして名門復活なるかだが、個人的には十分可能だと思っている。ここでは詳しく書かないが、実際に何度か学校に足を運び、ほぼほぼ原因が特定できた(と、思っている)。理由が何だか分からないというのが一番困るのであって、原因が分かれば必ず治療法はあるものだ。

 もう一つ気になるのは所沢北である。
 2017年度 2.36
 2018   2.30
 2019   2.36
 2020   1.73
 2021   1.84
 2022   1.99
 2023   1.73
 2024   1.48

 全県的に見れば十分高倍率であり、取り立てて心配することはないように見えるが、先ほど熊谷女子のところで述べたとおり、このような動きは長期低落の始まりと見ることもできるのだ。むろん、直ちに定員割れに至るようなことは100%無いわけだが、地域トップ校として、この時点(第1回調査)では、あこがれも含めて2倍に迫る高倍率を叩き出して欲しいと思うのである。

 最後に浦和も見ておこう。ここも問題ありだ。
 2017年度 1.48
 2018   1.52
 2019   1.55
 2020   1.62
 2021   1.28
 2022   1.31
 2023   1.58
 2024   1.36

 -0.22ポイントは前年度が1.58と高かったためと見ることもできるが、2020年度までは1.5倍台が通常運転だった。2021年度に1.28と大きく下がったが、2022年度1.31、2.23年度1.58と持ち直した。が、それは続かず今回は再び1.3倍台に逆戻りした。これもまた、やや悲観的な見方をすれば長期低落の始まりと言えなくもない。

 倍率は受験生の質までは分からないが、学校の人気を示すバロメーターである。希望者が増え(量が増え)、それに伴い質の向上が見られたという話は聞くが、希望者が減るほど質が高まるという話は聞かない。
 完全な右肩上がり、または右肩下がりというケースは滅多になく、上昇と下降を繰り返しながら、長期で見ると上昇曲線や下降曲線を描くのが普通だ。単年度で見ずに、少し長い目で見て、今自校がどの局面にあるかを冷静に見極め、早めに手を打つことが重要だ。

 今日は、大きく上がった方の学校も取り上げるつもりだったが、思いのほか時間がかかってしまったので明日に持ち越しだ。