「総合的な探究の時間」を見学に行こう。
 今日は川口北高校、明日は所沢北高校。

 「総合的な探究の時間」は現に高校で行われているものなので解説は不要。
 逆に私が教えてもらいたい。
 ここでは塾の先生方のために、私の知識の範囲で簡単に説明する。

 「総合的な探究の時間」、略して「総探(そうたん)」は、2022年度から施行された新しい指導要領になって登場した。
 それ以前に「総合的な学習の時間」というのがあったが、新指導要領では「探究」を冠する科目がいくつか誕生したので、それに合わせて改称された。
 なお、「たんきゅう」は「探究」であって「探求」ではない。
 変換ミスありがち。
 「求める」ではなく「究める」であるから、深く掘り下げることが必要だ。

 各学年の必修単位であるから、どこの学校でも最低週1回(1時間)は「総探」がある。
 こんなもの要らないと考えている学校もあるだろう。
 本気でやろうとするとかなりの労力となる。
 教科書があるわけではないから教材を一から作らなければならない。

 別に先生方が面倒くさいとかサボりたいと思っているわけではない。
 やるからには本気でやりたい。先生とはそのように考える人種だ。
 だが週1時間というのはいかにも中途半端だ。

 探究の見方・考え方を教える。
 教科横断的な学習をさせる。
 自己の在り方・生き方を考えさせる。
 課題を発見する力を養う。
 その上で分析し、整理し、発表させる。

 これらはこの新しい学びを構想した文部科学省の官僚やそれに協力する大学教授などの脳内にある理想の教育、未来の教育である。
 だが、実際に授業としてどう成り立たせるかについての具体策はない。
 あとはそれぞれの学校で考えなさい。
 よく言えば学校が自由に設計できる時間だが、裏を返せばいつもの「丸投げ」。
 特別に予算をつけてくれるわけでもない。

 そんなわけだから、各校の対応もさまざまだ。
 限られた時間と予算の中でとにかく最善を尽くしてみようと考える学校もあれば、中途半端に終わらせるくらいなら別の内容に置き換えたほうがいいと考える学校もある。
 どちらが正しいか私には分からない。

◆川口北の探究の時間
 川口北の例を見てみよう。
 「総探」は学年別、クラス別に実施されていることが多いが、ここでは1年から3年までの混合グループを作る。
 大学のゼミのイメージだ。
 1クラス40人の生徒をいったん解体して40のグループに所属させる。
 全学年全クラスでそれをやると各学年9クラスの学校であるから、27人(1・2・3年各9人)のグループが40できて、これが活動単位となる。

 では、この偶然に結集した27人グループが、まとまった一つの探究をするのかというとそうではない。
 各自の探求テーマは別々だ。
 このあたりも大学のゼミに近いイメージだ。
 むろんグループであるからその中で協力し合ったり議論し合ったりというのはあるだろうが、基本、探求テーマは自ら見つけ、自ら深める。
 どうやら「自ら課題を発見する」というところに重きを置いているようだ。
 今日は発表風景を見学したが、「なぜそれを思いついた」というような斜め上を行くテーマもたくさん見られた。
 テーマ決めに関して、先生はできるだけ口を挟まないようにしているとのことだ。

 部活動では当たり前だし、行事ではよくあることだが、学習活動において異学年集団が形成される機会は少ない。
 その点でも面白い試みだと思った。

◆島根県の高校生が来校
 今日は探究活動の時間に島根県の高校生(2年生)がやって来た。
 島根県立松江東高校の生徒たちだ。
 同校生徒が「東京研修旅行」の一環として訪れた。
 修学旅行の位置づけと思われる。

 2泊3日の2日目でグループ行動。
 大学や企業に向かったグループもあるが、その中で6人(たまたま全員が女子)が川口北を訪れた。
 なぜ島根県の高校がと思ったが、おそらく埼玉県教委と島根県教委が連携協定を結んでいることも関係しているのだろう。
 つまりパイプがあった。

 松江東高校は昭和56年創立というから、49年創立の川口北よりはやや新しい。
 1学年生徒数は200人と小規模だが、島根県公立高校は最大でも280人規模なので特に小さいというわけではない。
 (島根県の人口は埼玉県の半分以下64万人)
 学力レベル的には川口北とは差があるようだが、それでも地元島根大や島根県立大にはそこそこの人数が合格しているので地域の中堅校の位置づけだ。

 今日は、川口北の生徒に混じって発表も行った。
 また放課後行われたワークショップで交流を深めた。
 国際交流もいいが国内交流もいいものだ。