ネットニュースでは見出しに釣られて記事を見ると、時間を無駄にすることが多い。
まあ、これもそんな類だろうと予想したが、やはりそのとおりだった。
「喜ぶのは偏差値の低い私立高校だけ」 高校授業料無償化で何が起きる? 「行ける高校が近隣になくなる子も」(デイリー新潮)
記事の中身を詳しく話してしまうのはルール違反なので、ご興味のある方は上記の記事をお読みいただくとして、見出しにある「喜ぶのは偏差値の低い私立高校だけ」には、ちょっとだけツッコミを入れておこう。
なお、このブログは埼玉県限定と言っていい内容なので、ここでも埼玉県だけの話をする。
まず、「偏差値の低い私立高校」ということだ。
どこからが低い偏差値なのかは分からないが、仮に偏差値50以下を低偏差値と呼ぶとしたら、そういう私立学校は埼玉県内にはない。
ゼロではないが非常に少ない。
せめて真ん中より上、つまり偏差値50以上の成績がないと、選べる私立高校は極端に少なくなるのが実情だ。
記事の中で、大学教授の見解を紹介している。
「経営がうまくいっていなかった私立高校が救われるだろう。見栄えの良い制服や奇麗な校舎を前面に出して生徒集めをしていた私立に、これまで公立に進学していた層が通うようになるからだ」
校舎はいざ知らず、今時制服だけで生徒募集を成功させている私立がどこにある。
生徒集めに苦戦しているのは、立地条件が悪かったり、進学実績が出ていない学校である。
そういう私立高校は授業料が無償化されたところで人気が上昇することはあるまい。
原因は学費ではないのだ。
喜んでいいのは、むしろ偏差値高めの私立高校だろう。
公立トップ校の少し下に位置する学校と同レベルと目されている私立学校にとって、授業料無償化は有利に働く可能性が高い。
記事では、別の大学教授の話として、「税金への依存度が高まると、(中略) 長期的には学校運営にも影響が出て、教育の独自性が失われてしまうだろう」という意見を紹介している。
ここは確かに私立高校として注意しなければならない点である。
公金(税金)が投入されればされるほど、ある意味私立が公立化して行くわけで、その存在意義が薄れる危険性がある。
したがって、「私立は高い」という部分をどこかに残しておくべきだろう。
記事では「(無償化は)公立高校の地盤沈下を招きかねない」とも書いているが、ここも少し実態からずれている。
一部の公立トップ校を除けば、もうすでに地盤沈下は始まっている。
だから、より正確には「公立の地盤沈下を加速させる」可能性が高いのであり、もっと言えば地盤沈下どころか沈没ないし没落を招きかねないのである。
公立がそれを防ぐには、校舎の建て替えなども含め教育環境整備のためにどれだけの投資ができるかにかかっている。
実は、この点は私立の方も同じであって、投資ができた学校が生き残るのである。
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