新型コロナが蔓延したにもかかわらず日本の死者は減っているという話を小耳に挟んだので、さっそく元データを調べてみる。
 本当はこういうのを新聞やテレビでも取り上げて欲しいのだが、コロナにかかりっきりの今は無理そうだ。
 仕方ないから自分で調べてみる。

 人口の動きに関しては厚生労働省のHPにデータがある。
 直近10月までのデータだ。
 ↓ 
 厚生労働省「人口動態統計速報(令和2年10月分)
 これをもとにグラフを作成した。
 
 
 今年1月から10月までの死亡数は全国で113万2904人だ。
 前年1月から10月までの死亡者は全国で114万7219人だ。
 引き算すると今年の方が1万4315人少ない。
 減少率1.2%。

 まだ11月と12月の統計が出ていないが、新型コロナが蔓延する中、また高齢化が加速する中、死亡数が減少するというのは、ある意味不思議な現象だ。

 データがある今年7月までで死者が最も減少したのは肺炎(新型コロナや誤嚥(ごえん)性を除く)。
 インフルエンザによる死者も7割以上減少。
 交通事故による死者も減っている。

 新型コロナ以外の死因による死者が減少したのは、今まで以上に手洗いやマスク着用が徹底されたためだろう。
 交通事故による死者が減ったのも、旅行や買い物など外出する人が減ったことが影響していると考えられる。
 
 ただ一方で、自殺者は増加している。
 警察庁の統計によれば、今年11月までの自殺者は約1万9千人で、前年を550人(2.9%)上回っている。
 今後、経済状況がさらに悪化すれば、さらに自殺者が増える可能性がある。

 どこにも出歩かず、人と会わず、一緒に飯も食わず酒も飲まず。
 さらには店が潰れたり、会社をクビになったり。

 こんな世の中で、こんな生活をまた来年も続けるのかと想像すると、もうさんざん生きてきた私などは、いっそこの世とおさらばしてもいいんじゃないかと思ったりもする。
 まあ、私の場合、お好きにどうぞと言われるのが関の山だが、若い方はそうも行くまい。 

 毎日のように最高だ、最多だと、新型コロナ感染者数ばかりが報じられ、これを減らすことが目標のようになっている。
 むろん感染者数が減るのは好ましいし、それを否定する人は少ないだろう。
 当面の策として感染者数減という数値目標を掲げるまではよしとしよう。
 
 しかし、もっと大事なのは、われわれはどこに向かうのかという社会目標ではないか。
 これは常に考えていなければならない。
 ところが、今そんなことを言うと、「それどころじゃない」と一蹴される。

 学校や塾の先生方もこの一年間を振り返っていただきたい。
 いつもだったら、当たり前にやっていた「来年はこれをやろう」、「将来はこうしよう」といった議論がほとんど行われなかったのではないか。
 いや別にそれを責めようというのではない。
 そうせざるを得ない1年だったのだと思う。

 コロナ対策、コロナ対応に明け暮れた一年。
 その結果、毎年毎年やってきた将来に向けての議論や計画立案という部分が今年はポカンと空白になってしまった。
 この停滞のツケはどこかで払わなければならないだろう。

 来年がどんな年になるかは分からないが、幸運にもコロナが終息したとして何が残るのか。
 目標というのは、それが達成されたときに、自身にとって好ましい何かが得られなければならない。

 コロナ対策、コロナ対応はまだまだ続くだろう。
 だが、うまく乗り切ったとしても、それで得られるものはない。
 
 学校は、塾は、どこに向かうのか。
 来年は、そこを語り合う一年にしたい。