埼玉県公立入試の出願(願書提出)が2月15日・16日と間近に迫ってきた。
 いったん出願した後、志願先変更期間(18・19日)があるとはいえ、できれば一発で確定しておきたいものである。

 さて。
 最終的に志望校を決める際に偏差値で決めていいかということであるが、これはなかなか厄介な問題だ。
 「偏差値にかかわらず、自分が一番行きたい学校を受けなさい」などと言うが、そんなものはごくごく初期の段階の指導ではありかもしれないが、いざ勝負と臨戦態勢に入っている受験生にかける言葉ではない。
 誰だって試験に受かりたいのであるから、もっとも確率の高い学校を受けようとするのは当たり前で、その確率を推しはかるために偏差値に頼ろうとするのは当然の話なのである。
 
 ただ、偏差値というのは絶対的なものではない。
 過去の膨大なデータに基ずく信ぴょう性の高い資料ではあるが、完全無欠ではないのだ。
 信じ過ぎてもいけないし、信じなさ過ぎてもいけない。

 私がいつも言っているのは、この時期に来たら偏差値はいったん脇に置こうということだ。
 脇に置くのであるから捨てるわけではない。
 では何を真ん中に持って来るかと言えば、それは点数だ。
 偏差値を上げるより点数を上げることに意識を集中する。

 いやいや、ちょっと待て。結局同じことでしょう。

 そう。
 そんなんだが、微妙に違う。
 確かに偏差値を上げるというのは点数を上げることでしか実現できないのだから、偏差値を上げればいい。
 そうすればイコール点数も上がる。

 今仮に、目指す学校に合格するには、偏差値が1か2不足しているらしいとする。
 よし、では本番までにあと偏差値を1か2上げられるように頑張ってみよう。
 まあ本番までにもう模試がないから確かめようはないわけだが、そういう決意で臨もうということだ。

 そこまではいい。
 で、次に考えるべきは、偏差値を1上げるためには、あと何点必要かということだ。
 これまでも、模試を受けた後に、「あと何点で偏差値〇〇だったのに」とやってきたと思うが、今こそ、それを強く意識しなければならない。

 偏差値を1上げるための点数を簡易的にはじき出すには、模試の成績表に「標準偏差」というのが出ている場合、それを10で割ってみればいい。
 それが偏差値を1上げるために必要だった点数だ。
 これから受ける試験については平均点も標準偏差も分からないが、埼玉県公立入試の過去データを見ればおよその見当はつく。
 【令和2年度公立入試、各教科の標準偏差】

  国語 21.17
  社会 22.01
  理科 22.21
  数学(学力検査)20.33
  英語(学力検査)22.98
  数学(学校選択)12.93
  英語(学校選択)14.13

 今度の試験のことは分からないが、過去の経験に照らせば各教科とも1点か2点余計に取れば、その教科の偏差値は1上がる計算だ。

 これなら何とかなりそうだと勇気が湧いてくる人がいるかもしれない。
 また、決して1点2点をおろそかに出来ないなと気を引き締める人もいるかもしれない。
 どちらにしても、偏差値という加工されたデータよりも、点数の方がリアルな感じが出てきそうだ。
 偏差値をいったん脇に置くというのは、そういう意味だ。

 ついでだから「標準偏差」の話をもう少ししておく。
 学校や塾の先生方にとってはどうということもない話であるが、読者の中には保護者の方もおられるみたいだ。

 「標準偏差」は偏差値を出すために必要となる数字だ。
 偏差値は、(自分の点数-平均点)÷標準偏差×10+50で求めるので、計算上まず「標準偏差」を求める必要がある。
 「標準偏差」を求める式は省略するが、この「標準偏差」は、点数のばらつき具合を示すものだ。
 「標準偏差」の数字が小さいほど受験者の得点が平均点近くに集中している。
 逆に数字が大きい場合は、高得点者から低得点者まで大きくバラついている。

 上記の令和2年度公立入試の例で見ると、学校選択問題の数学と英語の「標準偏差」は小さい。
 これは毎年のことだ。
 こういう傾向のある試験では、平均点近くにみんなが密集しているわけであるから、そこから一つ抜け出すと偏差値は上がりやすい。
 割とみんながそこそこ出来そうなイメージがある社会や理科は「標準偏差」が大きく、得点はバラついている。

 80点と20点、70点と30点、60点と40点。
 どれも平均点は50点となるわけだが、平均点からの散らばり具合がそれぞれ違う。
 60点と40点の場合で自分が40点だったら、平均点まであと少しだし、ライバルは意外に近い所にいる。
 だが、80点と20点の場合で自分が20点だったら、平均点までが遠いし、ライバルはさらに遠い所にいる。
 平均点だけじゃ分からないことがある。

 というような話を今さらして、どうなるもんでもない。
 それは分かっているが、塾の先生方はこういう様々なデータを踏まえつつ、次年度の出題を予測し、その上で本人のクセや性格なども加味しながら、アドバイスをされているわけで、お仕事とはいえ本当に大変なことだと思う。
 これから先、「あんたら、いつ寝るんだ」というような生活が続くと思うが、体を壊さないよう注意してくれ。