今週月曜日、一冊の本が届いた。献本というやつだ。
 これから出版をしようとする人のために少しばかり解説しておくと、献本というのは書籍を出版した場合の慣例というか、常識みたいなものだ。

 書籍を進呈する。
 なぜ、そうするか。
 一つはお世話になった方へのご報告である。
 もう一つは、本の認知拡大を期待して、である。
 本来は有料である商品(書籍)を無料で進呈し、その人が何らかの形で紹介してくれることを期待する。
 いわば書籍売り上げ増のための投資である。

 ということで、前置きが長くなったが、期待に応えて本の紹介をしよう。
 
 著者は名門公立高校受験道場とある。
 出版社はKADOKAWAだ。
 発行元が角川ということは、よくある自費出版ではなく商業出版であろう。
 大手が本気出して売りにかかるのであるから、書店でドーンと平積みになっているだろう。
 ちょっと見てくるか。

 (1時間後)

 行って来た。
 冒頭のアイキャッチ画像が須原屋浦和コルソ店、下の写真が紀伊国屋書店浦和パルコ店である。
 
 両店とも平積みにはなっていなかったが、面陳列されていた。
 平積みというのは、表紙を上に向けて平台に何冊も重ねて置く陳列方法で、大量陳列に向いている。また、もっとも売れやすいとされている。
 次に売れやすいのは、本棚に表紙を手前に向けて陳列する方法。さっき見てきたのはこれ。
 それ以外は、背表紙だけ見える形で本棚に並べる方法だ。

◆著者は個人塾の先生たち
 本の著者は名門公立高校受験道場とあるが、個人塾の先生方が集まり作った団体だ。
 現在27都道府県51団体が参加しているそうだ。

 その中で、中心的役割を果たしているのが北浦和にある雄飛会の塾長・一柳忠宏(いちやなぎ・ただひろ)先生だ。
 今回、私に本を送ってくれたのも一柳先生だ。

 一柳先生と知り合ったのは12、3年前、私が模試会社を始めた頃だった。
 申込書を見ると場所が北浦和で、塾名が「雄飛会」。
 もしかして塾長は高校後輩?
 浦高校歌3番の最後に「広き宇内(うだい)に雄飛せん」とある。

 その後実際に会ってみて、中学校(本太中学校)、高校を通じての後輩であることが判明。
 ただし、年の差28と親子ほどの隔たり。

 塾は北浦和駅東口、通称浦高通りにあり、駅と浦高の中間あたり。
 ここに「浦高専門」を謳う個人塾を立ち上げた。
 知り合ったのは、彼がまだ塾を作って間もない頃だったと思うが、私は「浦高専門」のキャッチフレーズを見て、成功を予感した。

◆顧客ターゲットの絞り込みで成功
 「○○専門」と謳うのは、結構勇気のいることだ。
 どうしても上位から下位まで幅広く狙いたくなる。
 そこを我慢して「浦高専門」とやる。

 浦高を本気で目指している生徒は全県で1%にも満たない。
 実際はもっと少ないだろう。
 大手塾が「浦高専門コース」を作るのとはわけが違う。
 個人塾が「浦高専門」を掲げることは99%の顧客層を切り捨ててしまうことになる。
 だから、なかなか思い切れない。

 ところが、である。
 「浦高専門」なら、相当ハイレベルな塾だろうと考えた保護者が恐る恐る電話してくるのである。
 「一女志望なんですけど」
 「うちの子、女子で大宮志望なんですけど」
 と、ダメ元で問い合わせてくるのだ。

 もちろん、いいよ。
 女人禁制って謳ってるわけじゃないから。

 と、こんな展開になるであろうと想像できたので、コイツは上手くやるだろうと思ったわけだ。
 その通りとなった。
 そして、今回なんと本まで出したというから実に立派なものだ。

 さて、肝心の本の内容だが、20人ほどの変わり者の(もとい、個性派の)塾長たちが、分担執筆したものである。
 (一柳先生は執筆もしているが、主にプロデューサーの役割)
 今特に注目されている「自学力」について、実践を基にした報告や提案をしている。
 学者や研究者が書いたものと違って、日々の悪戦苦闘の中から編み出された知恵や工夫である。
 その点で、「我が家でも試してみようか」、「我が塾でも取り入れてみようか」となりやすいのではないか。

 本の帯に「わが子をこんな子に育てるためのヒントが満載!」とある。
 私も受験生向けの記事を書いたり、受験生・保護者からの悩みや質問に回答したりする立場であるが、受験生にアドバイスする際のヒントをたくさんもらった。
 今後、出典を明記し、引用させてもらうことにしよう。

◆応援するなら今
 本は発売後1~2週間が勝負だ。
 動きが少ないと返品されてしまうのだ。

 元出版屋で本の流通にはそれなりに詳しい私は、さっき書店に行ったとき、店員に「自学力の育て方」という本はどこにありますかと尋ねたのだ。
 聞くまでもない。教育とか学参とかのコーナーに行けば見つかるに決まっている。
 そこを、あえて聞く。
 熱心な店員はそういうのをよく覚えていて、その日実際に売れなくても、この本はしばらく置いて様子を見ようとなるのである。
 そうやって長く置いてもらうといずれ売り上げにつながる。

 購入することが一番の応援になるわけだが、買わずとも、こうした声掛けも援護射撃にはなるのだと申し上げておこう。