文部科学省が行った今年度の「全国学力・学習状況調査」の結果が発表された。いずれ時間をかけて中身を調べてみようと思う。

 この調査は、「悉皆調査」である。「悉皆(しっかい)」なんて滅多に聞かない言葉だが、早い話、「標本調査(サンプル調査)」に対し、「全部調査」または「全数調査」のこと。難しい言葉使わないで欲しいね。「しっかり調査」と勘違いするじゃないか。
 
 皆さんは、公立入試の平均点というものを目にしていると思うが、この算出には標本調査が用いられている。
 全数調査には大きな費用がかかる。集計や分析にも時間がかかる。そこで、多少の誤差には目をつぶり標本調査とするわけである。

 県発表の「平成31年度埼玉県公立高等学校入学者選抜 学力検査結果について」に、次のような記述がある。
―平成31年度埼玉県公立高等学校入学者選抜学力検査を受検した全日制43,424名、定時制1,059名の計44,483名の答案の中から、系統別抽出法によって答案を抽出し標本とした。これらを基本答案として、各問に対する答案の内容を分析し、必要な数値を示して所見を加えた―

 【国語・社会・理科】 母集団44,483 標本455
 【数学・英語】 母集団34,623 標本346
 【学校選択数学・学校選択英語】 母集団9,860 標本346

 平均点を算出する場合、学校選択の数学と英語以外は、1%の標本を抽出して行っているわけである。100人に1人だね。

 では、この1%を抽出する際、どのような方法をとっているかだが、「系統別抽出法」によるとある。
 抽出法で有名なのは無作為抽出法である。まあ、くじ引きみたいなもんだ。それに対し、「系統別抽出法」は、抽出の仕方に規則性を持たせる。具体的な規則性の持たせ方は分からないが、たとえば受験番号の末尾「1」を抽出すれば100人中10人の標本が得られ、末尾「11」を抽出すれば100人中1人の標本が得られる。おそらく、このような方法またはこれに似た方法で抽出が行われていると思われる。

 集められた標本(実物答案)をもとに、小問ごとの正答率・無答率・通過率などが求められる。また、誤答の傾向なども調べられ、これらも分析結果として発表される。平均点のみの集計なら全数調査も可能かもしれないが、限られた予算・スタッフでここまでの集計・分析を3か月以内に行うとなれば、標本調査が現実的な方法ということになる。

 余談だが、全国学テの実施には約50億円かかる。受験者は小6・中3合わせて約200万人だから、一人当たり2500円だ。英検の検定料や模試の受験料に比べると、そんなものかという感じだが、学校でやるから会場費も監督費も要らないし、むろん広告宣伝費もゼロだから、まあ当然と言えば当然だ。