売れている本を今さら紹介するのも何だが、この本は塾や学校の教室にも一冊置いておくといい。タイトルは「こども六法」。出版元は弘文堂で、著者は山崎聡一郎氏。弘文堂は遠い昔、「甘えの構造」(土居健郎)という大ベストセラーを出した出版社。山崎聡一郎氏は1993年生まれとあるから、まだ20代。若い人の活躍は喜ばしい。プロフィールをみると、埼玉県立熊谷高校を経て慶応義塾大学総合政策学部卒業とある。そうか、埼玉の高校、それも名門熊高出身か。では、ますます応援しなければ。

 「きみを強くする法律の本 いじめ、虐待に悩んでいるきみへ」(本書の帯より)。
 自らもいじめの被害者・加害者となった経験がある著者は、大学進学後、「法教育を通じたいじめ問題解決」をテーマに研究活動を開始した。一橋大学大学院修了後、現在は慶応義塾大学SFC研究所員として研究を続けている。
 本書は出版にあたり、クラウドファンディングの手法を用いた。定価を低く抑えるため賛同者から資金を募ろうという主旨だ。すでに終了しているが、プロジェクト「いじめという《犯罪》を『こども六法』で無くしたい」を一読することをお勧めする。

 日本国憲法に、刑法・民法・商法・民事訴訟法・刑事訴訟法を加えて六法。ご自身の書棚に六法全書を備えている方も多かろう。私の場合、ボロボロかつ埃まみれであるが。
 本書は、各法律の中から重要な条文と、子供に関係の深い条文をピックアップし、難解な法律用語をできるかぎり日常語に書き換え、さらに漢字にはすべてルビを振るという、丁寧かつ分かりやすい編集となっている。

 少しだけ例をあげると。
 「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」(憲法第21条)
 「話し合いをするための会を開いたり、考えたことを広めるグループを作ったり、本を出版するといった、すべての表現の自由を保障します」(こども六法)

 「何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する」(憲法第22条)
 「すべての人は、他人や社会に迷惑をかけないかぎり、どこに引っ越しても、どのような仕事に就いてもかまいません」(こども六法)
 
 「死刑は、刑事施設内において、絞首して執行する」(刑法第11条)
 「死刑は、そのための施設で首を絞める方法で行います」(こども六法)
 
 ね、ちょっと読んでみたくなるでしょう。
 日本国憲法の部分は、社会(公民)の勉強にピッタリ。
 子供向けに書いた本が大人に売れ、女性向けに書いた本が男性に売れという具合に、想定したターゲットを超えて売り上げを伸ばす例が過去にも多くみられたが、本書が売れ行き好調なのは、読者層が大人にも広がったためであろう。
 こちらは弘文堂のサイト↓
 こども六法プロジェクト