人生で初めて聞いた言葉、ロックダウン。小池百合子都知事によるコロナ関連の会見で出てきたものだ。幸いなことに、都知事は無学な私たちのために、「都市封鎖、いわゆるロックダウンですが…」と注釈を入れてくれたので助かったのだが、そうでなければ、どこからか岩石が落ちてくるのかと誤解するところだった。
 
 専門家が普段使い慣れている専門用語をついうっかり使ってしまうのはありうることだ。また、あえて専門用語を用いるのは、横文字の専門用語に適当な日本語訳がなく、無理に日本語に訳してしまうと誤解を招くという専門家らしい厳密性重視の現れとみることができる。

 だが、素人が格好つけて聞きかじりの専門用語を発するのは、格好悪いぜ。せめて、「専門用語ではオーバーシュートというそうですが…」くらいに止めようぜ。何か上から目線っぽいじゃないか。
 でもまあ、こんなことを言うと、黙れ埼玉県民、お前たちはそこらの草でも食ってろといわれるのが関の山だ。

 さて、他人への批判よりも、自身の物言いへの反省である。
 自分の中にも、みんなが「えっ、それ何、どういう意味?」って思うような言葉を格好よく使ってみたい衝動はある。
 だが、ふり返ってみると、こういう気持ち、先生をやっている時にはなかった。何しろ相手は自分より無知だってことは分かりきってるし、どうせ「わかんねー」と言うに決まってるから、先回りして分かりやすく言う。

 ところが民間人になり、大人相手に仕事をするようになってからは、難しい言葉や横文字を並べて格好つけたいという思いが強くなった。

 でもね。これって本当に危険なんだ。世の中には頭のいい連中がうようよしていて、こいつ分かってねえなというのが、すぐにバレちゃうんだ。
 
 知ってることを、知ってる言葉で言おうぜ。イコール、知らないことは正直に知らないって言おうぜ。
 知ったかぶりのヤツには、バカだなと思うだけで、親切に教えてやろうとは思わないだろう。でも、知らないから教えてくれと頼まれたら、いくらでも教えてあげようって気になる。
 で、結局、知らないと言ってしまったほうが得なわけだよ。

 衒学趣味(げんがくしゅみ)って言葉があるでしょう。書けと言われたら自信がないけど読むだけは読める。自分の知識をひけらかす悪い趣味ってことだね。これだけは避けよう。
 蘊蓄(うんちく)を傾ける。これも書けないが読める。こっちのほうがまだ余裕というか愛嬌がありそうだ。
 博学・博識・教養。めざす方向はこっちかな。ただ、如何せん私には残された時間が少ない。若いときの怠惰が悔やまれる。