ニュースは見出しだけでなく、中身をよく読まないといかんな。時々勘違いしている人がいるが、見出しは中身の要約ではないよ。中身を読ませるためのキャッチコピーだ。客寄せだ。
 で、今回取り上げるのが、この煽り文句。
 GoTo利用者は「発症」2倍 トラベルで東大チームが初調査
 共同通信からの引用だが、他者も似たり寄ったりの見出しをつけている。

 GoTo利用で感染リスク増、東大など研究チーム(FNNプライム)
 GoToトラベル利用者は発症2倍 東大チーム初調査(東京新聞)
 「GoToトラベル 感染リスク高い」 東大など研究チーム(TBS)

 いずれも、GoToトラベルが感染拡大の原因だ。
 とは書いてないが、そう思わせようとしているのが見え見えだ。

◆東大などの研究チームとは何者だ 
 私がまず気になったのは「東大などの研究チーム」というやつ。
 一体誰なんだ?
 いろいろ調べてみたら、ようやく見つかった。
 ここに論文そのものがある。
 Go Toトラベル利用者の方が、新型コロナウイルス感染症を示唆する症状をより多く経験していることが明らかに
 
 それによると、マスコミが「東大などの研究チーム」と名付けたのは、次の4人による共同研究チームだと分かった。
 宮脇敦士(東京大学大学院医学系研究科)
 田淵貴大(大阪国際がんセンターがん対策センター疫学統計部)
 遠又靖丈(神奈川県立保健福祉大学大学院保健福祉学研究科)
 津川友介(カリフォルニア大学ロサンゼルス校[UCLA])

 この4名の先生方が、2020年8月末〜9月末にかけてインターネット調査会社を通じて行われたアンケート形式の質問表調査の結果を分析した。

◆専門家の査読は受けていない
 論文の冒頭には、「本論文はプレプリントであり、著者ら以外の専門家からの科学的検討(査読)はまだ受けておりません。しかし、政策上重要なテーマであるため、速報性を重視するために公開しております」と断っている。
 なんだ、まだ他の専門家には読んでもらってないんだ。
 私は学問研究の世界には疎いのだが、第三者の専門家にチェックしてもらってない論文をマスコミに出しちゃっていいのかな。
 それともマスコミが食いついてくることを狙ったんだろうか。
 政策上重要なテーマであると言ってるんだから、むしろ公開には慎重であるべきなのではないか。

◆結論は、GoToトラベルのやり方を再検討しろ 
 調査では、GoToトラベルの利用経験(過去1−2ヶ月以内の利用の有無)と、過去1ヶ月以内に新型コロナを示唆する5つの症状(①発熱、②咽頭痛、③咳、④頭痛、⑤嗅覚/味覚異常)を経験していた人の割合との関連を調べた。
 その結果、「GoToトラベル事業の利用者は非利用者よりも新型コロナに感染するリスクが高いことを示しており、GoToトラベルトラベル事業が新型コロナ感染拡大に寄与している可能性があることを示唆しています」としている。
 
 なるほど。
 しかし、そうなると共同通信などの「発症2倍」というのは、まずいんじゃいないかな。
 研究チームの先生方は、感染リスクが高そうだと言っているだけで、感染者が2倍いたとは言っていない。
 GoToトラベル利用者の中に、喉が痛い、咳が出るなどコロナによくある症状を訴えている人が、少しばかり多いと言っているだけだ。
 
 また、先生方は、「GoToトラベルの利用が直接的に新型コロナ症状の増加につながったという因果関係は断定できない」と言っている。
 さらには、「GoToトラベルのような経済政策も、新型コロナの感染拡大を引き起こしてしまえば、ロックダウンのようなより厳しい追加的な対策が必要となることで、結果として経済により大きなダメージを与えることになってしまいます」、だから、「GoToトラベルのような政策をより適切に行うためには、なるべく感染リスクの低い集団の経済活動を喚起するように制度設計することが望ましいと考えます」とも。

 そうか、直ちにGoToトラベル辞めろじゃないんだ。
 やり方がまずいと結果的には大きなダメージになるから、方法を考え直せと言っているんだな。

 見出しだけ見ても分からん。
 記事本文でもまだよく分からん。
 元ネタ当たって、ようやく少し理解できた。