昨日の続編だ。第2回進路希望調査の結果から実際の出願倍率を予想してみる。
 昨年もやってみたが、予想が的中した学校もあれば、大外れだった学校もある。
 
 できるだけ多くの学校を扱いたいが、予告したとおり今回は「学校選択問題採用校」に絞った。
 東西南北の順である。
 また、複数学科(理数や外国語)がある学校の場合も、普通科だけを対象とした。

 なお、今後県は数回にわたって倍率を発表する。
 1 最初の出願時の倍率
 2 志願先変更後の倍率
 3 学力検査当日の倍率
 4 合格発表日の倍率
 5 最終報告の倍率(4月)
 今回、ここで出願倍率と言っているのは、「1 最初の出願時の倍率」である。
 その後、志願先変更があり、学力検査当日までに取り消しがあったり、当日欠席があったりする。
 試験当日までに、まだ変動があるということだ。

【東部地区】
春日部
 倍率は左側が「12月15日現在」、右側が「出願時」である(以下同じ)。
28年度 1.28→1.41
29年度 1.17→1.43
30年度 1.15→1.37
31年度 1.16→1.36
02年度 1.16→1.34
03年度 0.99→?
 繰り返し述べているが、例年、第2回調査から実際の出願にかけて倍率が上昇する要因の一つに、隣接県協定に基づく県外受験生の出願がある。
 昨年は1.35倍前後に落ち着くと予想し、ほぼその通りとなった。
 今年の予想は難しい(他の学校も同じことだが)。
 このまま定員割れはないだろうが、上がっても1.20倍までと予想する。

越ヶ谷
28年度 1.69→1.47
29年度 1.88→1.47
30年度 2.14→1.78
31年度 2.02→1.56
02年度 1.78→1.38
03年度 1.72→?
 実際の出願に向けて下がり幅の大きい学校である。
 昨年は1.5~1.6倍まで下がるかどうかと予想したが、それよりさらに下がった。
 今年も昨年並みに1.40倍前後まで下がると予想する。

越谷北
28年度 1.39→1.30
29年度 1.60→1.38
30年度 1.60→1.36
31年度 1.22→1.06
02年度 1.10→1.07
03年度 1.46→?
 2年続いたこの時期の低倍率から脱し、今回調査では大幅に上昇した。
 昨年は本出願では1.15~1.20倍まで上がると予想したが見事に外れ、逆に1.07倍まで下がった。
 今年は1.46倍からのスタートなので、下がる可能性が高い。それでも1.30~1.40倍をキープすると予想する。 

不動岡
28年度 1.50→1.34
29年度 1.60→1.50
30年度 1.40→1.33
31年度 1.44→1.33
02年度 1.33→1.23
03年度 1.36→?
 過去5年、実際の出願に向けて下がっているので今年もそのパターンと見るのが妥当だ。
 昨年は大幅な低下はないと予想した。1.33倍から1.23倍だから、一応予想の範囲に収まったと言っていいだろう。
 今年も上がることはなく、現状維持か、下がっても1.20倍台と予想する。

【西部地区】
川越
28年度 1.52→1.53
29年度 1.34→1.27
30年度 1.33→1.28
31年度 1.45→1.40
02年度 1.45→1.46
03年度 1.40→?
 第2回から実際の出願にかけての変動は少ない学校である。
 昨年は、下がるが1.40倍以下にはならないと予想したが、逆に上昇し、外れだった。
 今年は上がる可能性と下がる可能性の両方があるが、過去5年間0.05~0.07ポイントの低下で収まっていることから、現状維持の1.40倍前後と予想する。

川越女子
28年度 1.62→1.61
29年度 1.41→1.37
30年度 1.37→1.38
31年度 1.54→1.49
02年度 1.40→1.39
03年度 1.35→?
 ここも川越同様、第2回から実際の出願にかけての変動は少ない学校である。
 昨年は過去の動向から、ほぼ現状維持と予想し、その通りだった。
 今年は調査では例年より低いが、実際の出願も現状維持の1.35倍前後となると予想する。

川越南
28年度 2.04→1.61
29年度 1.78→1.55
30年度 1.78→1.52
31年度 1.69→1.44
02年度 1.68→1.31
03年度 1.99→?
 過去5年、実際の出願に向けて下がっているので今年もそのパターンだろう。
 昨年は1.45倍前後まで下がると予想したが、実際は1.31倍まで下がり、ハズレだった。
 今年はかなり高い状態からのスタートなので1.50倍前後と予想する。

所沢
28年度 1.40→1.29
29年度 1.43→1.37
30年度 1.59→1.51
31年度 1.61→1.49
02年度 1.42→1.24
03年度 1.23→?
 過去5年、実際の出願に向けて下がっている。
 昨年は下がっても1.30倍台後半までと予想したが、実際は1.24倍まで下がり、ハズレだった。
 今年はこれ以上下がることはなく、現状維持か、1.20倍台後半まで上がる可能性ありと予想する。

所沢北
28年度 1.66→1.41
29年度 1.96→1.66
30年度 1.95→1.60
31年度 1.81→1.55
02年度 1.28→1.11
03年度 1.59→?
 過去5年、実際の出願に向けて下がっている。
 昨年は1.28倍という低倍率からのスタートなので、従来とは逆に1.50~1.60倍まで上がると予想したが、実際はさらに下がり1.11倍だった。予想は大外れだった。
 今年は1.59倍からのスタートなのでほぼ現状維持か、下がっても1.40倍台と予想する。

和光国際
28年度 1.82→1.66
29年度 1.59→1.31
30年度 1.34→1.31
31年度 1.42→1.24
02年度 1.65→1.39
03年度 1.29→?
 過去5年、実際の出願に向けて下がっている。
 昨年は1.40倍前後まで下がると予想したが、ほぼその通りとなった。
 今年は1.29倍という低倍率からのスタートなので、ほぼ現状維持の1.30倍前後と予想する。

【南部地区】
浦和
28年度 1.38→1.35 
29年度 1.51→1.39
30年度 1.54→1.41
31年度 1.51→1.44
02年度 1.54→1.53
03年度 1.30→?
 第2回から実際の出願にかけての変動は少ない学校である。
 昨年は、多少は下がるものの1.45倍前後まで予想したが、ほぼ変わらずで予想はややハズレだった。
 今年は1.30倍という低倍率からのスタートなので現状維持か、上がっても1.35倍前後までと予想する。 

浦和一女
28年度 1.33→1.41
29年度 1.51→1.51
30年度 1.26→1.25
31年度 1.21→1.35
02年度 1.40→1.39
03年度 1.41→?
 第2回から実際の出願にかけての変動は少ない学校である。
 昨年は現状維持か多少の低下と予想したが、ほぼその通りとなった。
 今年も昨年同様、現状維持か、下がっても1.30倍台後半までと予想する。

大宮
28年度 1.99→1.65
29年度 1.84→1.58
30年度 1.81→1.52
31年度 1.66→1.39
02年度 1.56→1.36
03年度 1.76→?
 過去5年、実際の出願に向けて0.2~0.3ポイント程度下がる傾向が見られる。
 昨年は1.3倍台後半から1.4倍前後に落ち着くのではないかと予想したが、ほぼその範囲に収まった。
 今年も下がるのは確実で、1.50~1.60倍と予想する。

浦和西
28年度 1.87→1.69
29年度 1.91→1.79
30年度 2.07→1.61
31年度 2.11→1.68
02年度 1.96→1.56
03年度 1.78→?
 過去5年、実際の出願に向けて下がってる。
 昨年1.60倍台後半まで下がると予想したが、実際は1.56倍まで下がり、ハズレだった。
 今年も下がるのは確実だが、1.78倍とこの学校としては低い倍率からのスタートなので、1.60倍台後半と予想する。 

川口北
28年度 1.53→1.46
29年度 1.37→1.32
30年度 1.43→1.46
31年度 1.08→1.29
02年度 1.37→1.41
03年度 0.89→? 
 以前と異なり、ここ数年は第2回から実際の出願にかけて上がる傾向に転じている。
 昨年は1.35~1.45倍に落ち着くと予想したが、一応その範囲には収まった。
 今年は異例の定員割れ状態からのスタートなるが、1.00倍までは届くものの1.20倍前後が上限と予想する。


28年度 2.16→1.63
29年度 2.02→1.49
30年度 1.40→1.10
31年度 1.72→1.47
02年度 1.79→1.53
03年度 1.63→?
 過去5年、実際の出願に向けて下がっている。
 昨年は1.50倍前後まで下がると予想したが、ほぼその範囲に収まった。
 今年は1.63倍と、この学校としては低い倍率からのスタートなので、昨年同様1.50倍前後と予想する。 

市立浦和
28年度 2.59→2.03
29年度 1.51→1.14
30年度 1.74→1.36
31年度 2.50→1.91
02年度 2.13→1.59
03年度 2.29→?
 過去5年、実際の出願に向けて下がっている。
 昨年は、1.50倍台まで下がることは考えにくく、1.75倍前後、ことによったら1.80倍もと予想したが、実際は1.59倍まで下がり、大きくはずれた。
 今年も下がるのは確実だが、下がり幅の予想が難しい。昨年の下がり幅から1.60~1.70倍と予想する。

川口市立
 30年度 2.19→1.61
 31年度 2.37→1.56
 02年度 1.86→1.20
 03年度 2.42→?
 市立3校が統合され「新・川口市立」となってから3回の入試しか経験しておらず、傾向はつかめない。
 ただ、過去3年を見れば、第2回はかなりの高倍率となり、実際の出願では大きく低下しているので、今年も1.50倍~1.60倍まで下がると予想する。

【北部地区】
熊谷
28年度 1.29→1.32
29年度 1.04→1.19
30年度 1.21→1.27
31年度 1.21→1.25
02年度 1.05→1.07
03年度 0.93→?
 過去5年、実際の出願に向けて上がっている。
 昨年は、上昇するものの1.20倍に届くかどうかと予想したが、ほぼ現状維持の1.07倍にとどまっており、ハズレだった。
 今年は昨年よりさらに低い0.93倍からのスタートなので、1.00倍を少し超える程度と予想する。

熊谷女子
28年度 1.22→1.32
29年度 1.12→1.24
30年度 1.16→1.29
31年度 1.08→1.16
02年度 1.22→1.19
03年度 0.99→?
 実際の出願に向けて上がるパターンだったが、昨年は逆に下がった。
 昨年は、過去パターンから下がることは考えにくく1.30倍台に乗るかどうかと予想したが、、逆に1.19倍まで下がってしまい大外れ。
 今年は昨年よりさらに低い0.99倍からのスタートなので、熊谷同様、1.00倍を少し超える程度と予想する。
 
熊谷西
28年度 1.50→1.22
29年度 1.49→1.17
30年度 1.45→1.13
31年度 1.13→1.01
02年度 1.46→1.28
03年度 1.55→?
過去5年、実際の出願に向け下がっている。
昨年は1.2倍前後に落ち着くと予想したが、それより少し高めの1.28倍であり、ややハズレだった。
今年は定員減の影響もあってやや高めの倍率からすのスタートとなる。昨年同様、1.20~1.30倍に下がると予想する。

 以上、過去5年間データに基づく実際の出願時(志望校変更前)の倍率予測である。
 昨年も大外れだったケースも多いので、参考程度に見ていただければ良いと思う。

 さて、今回は「学校選択問題採用校」に限定し、かつ倍率だけを見てきたわけだが、これらの学校を希望する者の総数(実人数)にも触れておこうと思う。

 昨年との比較のため、今年から加わった川口市立と、今年撤退した春日部女子を除く20校で見てみる。
 12月15日現在の数字である。
【学校選択問題採用校20校の総希望者数】 
 昨年希望者総数 10.019人
 今年希望者総数  9.685人
 差し引き増減   -334人(3.3%減)
 ということで、やや減少気味だ。
 ただ、卒業予定者数が昨年に比べ1353人減っている点(2.1%減)を考慮しなければならない。
 卒業予定者数の減少に伴って、高校進学希望者、全日制希望者、県内高校希望者、県内公立希望者など全てが減少しているから、それらを考慮すると実質的には(割合的には)ほとんど変わらない。人気のある川口市立と定員割れスレスレの春日部女子が入れ替わった分、むしろ増えていると言ってもいい。

 だとすれば、希望者の変化は、一応県内上位校グループと目される「学校選択問題採用校」の中で起きているということになる。

 昨年同期と比べ、実数・割合共にもっとも減らしているのは川口北(170人減、-34.7%)だが、これは同じ市内の川口市立に相当数が流出したのではないかと考えられる。川口市立は新設校への期待、豪華な校舎・施設設備、理数科や特進コースの設置などで当初から人気を集めた。しかし、川口北とは、いわば「格」の違いがあった。「学校選択問題採用校」と「学力検査採用校」の違いだ。しかし、川口市立が同じ土俵に乗ってきた。川口北はこのあたりの情勢分析が少し甘かったかもしれない。

 和光国際(107人減、-21.4%)も大きく減らしている。西部地区から南部地区への流れは非常に数が少ないので、従来の和光国際希望者層が他の西部地区公立を選ぶとなると「学校選択問題採用校」の中では所沢(68人減、-13.4%)か川越南(111人増、+18.4%)ということになるが、所沢は減らしているし、学校カラーが違い過ぎる。そうすると川越南への流出となるが、そういう選択の仕方があるのかどうか。川越よりも池袋に出る方が早いという地理的な条件を考えると、都内私立への流出もあるかもしれない。
 この点については西部地区の事情に詳しい塾の先生方の分析に頼りたい。

 熊谷(38人減、-11.3%)、熊谷女子(74人減、-19.0%)の両伝統校も大きく減らしている。
 減少傾向は今に始まったことではない。埼玉県は鉄道網・道路網共に南北は移動しやすく、東西は移動しにくい。市内トップ層が大宮など南部地区にある県下トップ校を目指す動きはかなり以前から見られた。熊谷、熊谷女子両校の深刻な問題は、市内及び周辺中学校の上位層が他地区公立や私立に流出していることだろう。

 浦和(86人、-15.6%)の減少を大きいと見るか、想定内と見るかは意見が分かれるところだろう。従来の浦和希望者層が大宮(96人増、+17.5%※理数含む)に流れたという想定も成り立つが、両校の間にそれほど大きな差があるわけではないので、いたとしてもそれほど多くはないだろう。
 浦和は例年2回開いている学校説明会(教育活動説明会)を今年は1回しか開催しなかった(1回目はオンラインに切り替え)。今は伝統校と言えど、黙っていて生徒が集まる時代ではない。こうした広報姿勢にも若干問題があったのではないか。

 浦和一女(3人減、-0.6%)は、「学校選択問題採用校」20校の中では、もっとも変動が少なかった。1学期から学校説明会を開催するなど(実際はコロナの影響で中止になったが)、他の伝統校と比較して多くの説明会を行うなど広報活動に努めた。実際に説明会に行ってみたが、これまでより「進学校アピール」「女子校アピール」が強く出ていた印象だ。「女子校狙いの層」を手堅くまとめ切ったというところだろう。

 川越(20人減、-3.9%)、川越女子(16人減、-3.2%)の両伝統校は、割合としては全体の減少率にほぼ等しいので、所沢北(94人増、+20.2%)に多少流出があった程度だろう。

 春日部(59人減、-14.2%)はこのところ第2回調査時点での低倍率が続いていたが、ついに定員割れ状態となった(ほんの僅かだが)。男子校と共学という違いはあるが、不動岡(25人増、+5.5%)、越谷北(118人増、+29.7%)への流出があった可能性がある。学区制があった時代から南部地区と競合関係にあった。県外(千葉県など)からの受験生を当てにしているわけではないだろうが、もっと県内に目を向けないと熊谷や熊谷女子と同じ運命を辿りそうで心配だ。
 
 今日は少し時間をかけて各校の数字を見てきたわけだが、昨日書いた「消極姿勢、安全志向」は、ある程度確かそうだが、超がつくほどではないことが分かった。むろんこれは数字の上でということであって、実際に受験生を指導されている先生方はまた別の印象を持たれていると思う。

 不肖私もはるか昔は受験指導(大学進学)をしていたのだが、さまざまな機会を通じて、一つ一つ階段を昇って行くように「受験生としての心構えや戦う姿勢」を作り上げて行くことが重要だったわけである。
 しかし、今年はコロナの影響で、そうした機会や時間の多くが失われたため、例年に比べ、「心構えや戦う姿勢」に物足りなさがあるかもしれない。

 ただ一方で、かれら今年の受験生は、大人達でも不安に苛まれ、目標を失いそうになる中で、健気に、そしてしたたかに勉強を続けてきたではないか。
 これは立派なことだ。まだ少し早いが、これだけは褒めてやらなければならない。

 今週末はいよいよ私立入試だ。