教員免許更新制度が見直されるようだ。
 この制度は2009年に始まった。短命に終わった第一次安倍政権の置き土産だ。その後、民主党政権に代わったが、マニュフェストに掲げた制度見直しは実現しなかった。
 開始から10年余りしか経っていないが、世の中の雰囲気も大きく変わったことだし、見直しは当然であろう。

◆更新制度は人材確保にも影響
 令和3年3月12日。
 萩生田光一文部科学大臣は下記について中央教育審議会に諮問した。

 「令和の日本型学校教育」を担う教師の養成・採用・研修等の在り方について(諮問)
 

 このうち、教員免許更新制度に触れたのは次の部分だ。
 「なお、教員免許更新制度については、教師が多忙な中で、経済的・物理的な負担感が生じているとの声や、臨時的任用教員等の人材確保に影響を与えているという声があることなども踏まえ、前期の中央教育審議会において教員免許更新制や研修をめぐる制度に関して包括的な検証を進めていただいたところです。現場の教師の意見などを把握しつつ、今後、できるだけ早急に当該検証を完了し、必要な教師数の確保とその資質能力の確保が両立できるような抜本的な見直しの方向について先行して結論を得ていただきたいと思います」

 要約すると。
 更新制度は教師の負担になっている。
 人材確保にも影響を与えている。
 よって、抜本的な見直しの方向で議論してほしい。

 10年ごととはいえ、何十時間もの無意味な講習を受けなければならず、加えて自腹も切らなければならないので、教師の負担になることは初めから分かっていた。
 で、それだけだと今さら何を言っているのだ、となるので、制定当時はあまり話題にならなかった人材確保への影響を持ち出して、抜本的見直しの口実にしようというわけだ。
 抜本見直しというからには、事実上の廃止に近い結論が出ないと教師も世間も納得しないだろう。

 教員免許を持たない社会人を積極的に教壇に立たせようとしている時代に、教師だけに更新を義務付けたのでは辻褄が合わない。更新制度はもとより、免許制度そのものも見直されなくてはならない。

◆10年で風向きが変わった
 いま現在、世論は更新制度廃止に傾いているように見える。
 しかし、制度ができた時代(と言っても僅か10年前だが)、世論は制度制定をむしろ後押ししたはずだ。
 
 元々は自民党文教族が言い出したことだ。利権がらみと想像するが、確たる証拠はないから、これはただの感想。
 当時、今と同じように教員の不祥事が頻繁にマスコミで取り上げられていた。
(どうもこれは永遠のネタのようだ)
 いったん取得したら永久に使える制度でいいのか。もっと研修させろ。不適格な教師から免許を取り上げろ。
 当の教師たちからは不評だったし反対の声もあったが、世間はむしろ歓迎した。それが10年前だ。
 
 その後、世の中の空気は変わり、働き方改革が大きなテーマとなった。
 その中で、学校は「ブラック職場」などと言われるようにもなった。そうなれば、無意味な長時間研修もブラックの一因となる「問題ありの制度」ということになり、今度は廃止の世論が巻き起こる。
 まったく。世論なんてものはいい加減なものだ。

 いずれにせよ、金と時間をかけるだけで「教員の資質向上」には何も寄与しない制度であったわけだから、一刻も早く廃止したほうがいい。

 資質向上を図るには、教師に時間的な、精神的なゆとりを与えることだ。
 そうすれば、黙っていても自ら研究と修養に励むだろう。例外はあるだろうが、教師というのはそういう類の人たちだ。