専門高校(学科)を訪ねるシリーズ第三弾は鳩ヶ谷高校園芸デザイン科だ。

 鳩ヶ谷高校は「普通科」と商業系の「情報処理科」、農業系の「園芸デザイン科」の三科からなる複合型高校である。
 変わった取り合わせだ。

 埼玉県では昭和40年代の終わりから50年代にかけて、生徒急増期を乗り切るために普通科高校を作りまくった。多い年は1年に7校も8校も新しい学校を作った。そんな状態が10年以上続いた。新設校はほとんどが普通科高校だった。

 しかし、昭和も最後の方になってくると、学校の数が足りてきたこともあり、普通科だけではつまらないからちょっと毛色の変わった高校を作ろうじゃないかとなった。
 それで出来たのが、昭和61年(1986年)の大宮光陵高校。これは普通科と芸術系専門学科(音楽・美術・書道)の組み合わせ。
 翌昭和62年(1987年)に出来たのが和光国際高校。これは普通科と外国語科と情報処理科の組み合わせ(現在、情報処理科はない)。
 そして昭和63年(1988年)に出来たのが鳩ヶ谷高校。昭和時代最後の新設校だ。

◆昔から、植木の街
 なぜ鋳物の街、工業の街川口(当時は鳩ヶ谷市だったが)に農業専門学科を作ったか。
 答えは、近隣の安行(あんぎょう)地域が植木の街だったから。

 鳩ヶ谷高校からも近い川口市安行(あんぎょう)地域は昔から園芸農業が盛んであり、植木の街として知られていた。造園業者もたくさんあった。実際、川口市内の県立高校に勤めていた私から見ても「安行イコール植木」であったから、鳩ヶ谷高校に農業専門学科である「園芸デザイン科」があっても何の違和感も感じないのである。

◆デザインがポイント
 杉戸農業高校や羽生実業高校に園芸科がある。
 それに対し、こちらは「園芸デザイン科」。
 農業専門学科である点は同じだが、かたやデザインなし、かたやデザインあり。
 ということは鳩ヶ谷高校園芸デザイン科は「デザイン」の部分が非常に重要であり、特徴ともなっているわけである。

 杉戸農業などはその名称からも分かるように農業だけの専門高校である。その中の園芸科であるから、その内容も「ザ・農業」とも言うべきもので、野菜や草木、果樹などを実際に育てるのだ。フラワーデザインなどもちょっとはやるが、一方ではトラクターだって運転する。

 それに対し、鳩ヶ谷高校園芸デザイン科は、畑で育てることもするが、そちらがメインではなく、フラワーデザインやグリーンデザインという形で草花などを用いて空間をデザインすることを主に学ぶ。
 農業高校の園芸科が自然とも戦うハードな農業専門学科だとすれば、鳩ヶ谷高校の園芸デザイン科は、都会的なセンスも求められるライトな感覚の農業専門学科と言えるだろう。

 生徒募集面では、毎年ほぼ定員(40人)を充たしているから、地域において一定のニーズはあるのだろう。いろいろな形の専門学科があっていい。