公立高校入試への併願制導入の件。
 これについて書くのは3回目。

 今日も出ていたこんなニュース。

公立高校入試が併願制に? 「めちゃくちゃ うらやましい」 レベルの高い学校にチャレンジできるなど賛成多数 “定員割れ”との二極化懸念も【広島発】(FNNプライムオンライン)

 日頃政府には厳しく当たるマスコミだがこの件に関してはなぜか好意的だ。
 この記事もそうだが賛成、歓迎の意見が多く取り上げられ、否定的な意見はほとんど紹介されない。

 石破政権は予算と引き換えに日本維新の会が主張する高校授業料無償化政策を飲んだ。
 所得制限を撤廃することになったが、私立に有利であり公立離れにつながるのではないかとの批判も見られた。
 そこで公立救済策あるいは公立復権策として併願制導入を検討することになった。行政デジタル化の方向とも一致し一石二鳥。

 といった具合で、ツッコミどころ満載に見えるが、マスコミには政府の定見の無さを批判する様子が見えない。
 ここが不思議なところだ。
 マスコミにとって併願制導入は利益(プラス)をもたらすからだろうが、それが具体的に何なのかは今のところよく分からない。

 この件は教育改革の一部をなす入試改革なのであるが、これによって生徒らの学力が上がるとか、学校の教育レベル(教育の質)が上がるとか、そういった話は一切されていない。
 おそらく今後もそういった話にはまったく触れることなく進められていくのだろう。

 メリットは思い切ってチャレンジできることだという。
 まあ、それはあるだろう。
 おそらくトップ校の倍率はとんでもないことになるだろう。

 埼玉県の場合で言うと、浦和・浦和一女・大宮(通称ご三家)の3校だけで458人の不合格者を出している(令和7年度入試)。
 これら不合格者は単願制の下ではほとんどが私立に入学することになる。
 しかし、併願制の下では、ワンランク下の公立をいわゆる「滑り止め」とすることができる。
 さて、ここから始まるのが「玉突き」である。
 仮にご三家のその下を市立浦和と考えたとき、ここもすでに203人の不合格者を出しているが、その数がさらに増えることになる。
 そこで、市立浦和で止まらなかった受験生や、市立浦和からはじき出された受験生は、さらにもうワンランク下に入ることになる。
 
 問題はこの玉突き現象がどこまで続くかということだ。
 上から順番に埋まって行き、下位校まで連鎖し、すべての公立が定員を充たすか。
 いや、それはないだろう。
 あるレベルまで到達すると、その先には進まず、私立の方がいいだろうとなる。
 だって、私立も授業料無償なわけだし。

 私立は無償化しない。
 無償化するにしても所得制限を設ける。
 その上で併願制を導入すればかなりの効果が期待できるが、公立と私立の条件がほとんど変わらない状況では効果は限定的だろう。
 ただ、併願制を導入しても、まったく希望者が増えない公立も現れるわけで、そうした学校を廃校にする口実は生まれるだろう。