学校はターゲットになりやすい。明日から全国の小中高は臨時休業となる。「子供たちを守る」と言えば聞こえはいいが、狙いは別のところにありそうだ。

◆学校休みによる抑止効果は限定的
 一定期間学校を休みにすることで、ある程度は感染拡大を抑止できるかもしれないから、そこは強く反対はしない。ただし、小学生636万9千人、中学生321万8千人、高校生316万8千人、その他(中等教育・専修・特別支援など)95万3千人、合わせて1370万8千人(児童生徒数は令和元年度学校基本調査による)による抑止効果は、総人口から考えれば限定的だと分かるだろう。

◆学校は経済活動を行う主体ではないから標的になりやすい
 学校をターゲットにすると人々の関心を集めやすい。よって、今回の首相による休校要請もインパクトは十分だ。それでいて経済的損失は少ない。なぜなら、かれらは経済活動(生産活動)を行っていないからだ。
 満員電車による通勤を止めるということは、日本の経済活動をストップさせるということで、損失を被るのは経済界だけではない。国民生活が犠牲になるのである。
 通勤こそ止めるべきと言う人は、あの東日本大震災の時と同じか、それ以上の危機的な状況を受け容れる覚悟がなければならない。電気や水道は止まらないだろうが、食品や生活必需品は市場から姿を消すだろう。ドラッグストアからトイレットペーパーが無くなったどころの騒ぎではない。

◆働き方改革問題と同じパターン
 経済的損失の少ないところからやろうというのが、政府の基本的な態度であるのは、働き方改革の議論を見てもわかる。
 マスコミの協力を得て、ことさら学校の先生や部活動に焦点を当ててみせる。まるで、先生の働き方を変えれば、働き方改革は完了するかのように世論誘導をしている。もちろん、一時期教育界に身をおいた者として、先生の働き方改革に異議などあろうはずはない。しかし、真の問題から目をそらさせようというたくらみに騙されてはいけないと思う。

◆意外と少ない教育的な影響
 休業の時期が3学期末(学年末)に重なっていたのも、一気に学校休みに踏み切れた要因だ。入試や卒業式といった大きなイベントもあり、そちらに目を奪われるが、3月に入ると終業式までの3週間はフルに授業を行う日は少ない。極端に言えば行事やその予行の合間に授業をしている感覚だ。期末考査をすでに終えている学校も少なくない。
 だから休んでいいというのではなく、他の時期との比較において影響は最小限に収まるだろうということだ。

◆要するに時間かせぎ
 効果は限定的だがインパクトが大きく、それでいて経済的損失の少ない「学校休み政策」を大胆にぶち上げたのは、次の手を打つまでの要は時間かせぎなのだろう。だから私たちは、次の手にこそ大きな関心を寄せるべきなのである。
 子供たちを守るためと言いながら、子供たちや親たちや先生たちを犠牲にしているのが今回の政策である。百歩譲って、緊急避難として止むを得ないものと受け容れたとして、いつも都合よく利用するばかりでなく、真剣に学校や教育のことを考えて欲しいものである。