埼玉県公立高校では先週から卒業式が行われている。文部科学省から示された学校の卒業式・入学式等の開催に関する考え方に従い、参加人数を抑え、時間短縮し、参加者間のスペースを開けるなどの配慮をした上での実施となっているようだ。

 いつもとは違った雰囲気。
 だったと思うが、そのことを一番感じているのは先生方かもしれない。高校生にしても中学生にしても、それぞれの学校においてただ一度の卒業式だったわけで、前年に在校生として出席していたとしても、先生ほどにはいつもとの違いを感じなかったのではないか。

 卒業式は卒業証書授与式であり、式典のメインは卒業証書の授与である。
 今回は時間短縮のため、代表生徒のみとした学校がほとんどと思われるが、卒業生一人一人に証書を手渡すことこそ、この式典の目的であり意義である。
 私が教員として勤務していた川口北高校では、壇上に一人一人あがらせ、校長から授与するという方式を続けていた(現在どうなっているかは不明)。時間がかかるからクラス代表でいいのではないかという意見も時々出たが、ここは時間節約をしていい場面ではないだろうという声が上回った。

 式にお客(ゲスト)を招くのは普通のことだが、今年に限っては、保護者や来賓の参列はなかった。
 さて、これで何か不都合があったか。
 国歌斉唱
 校歌斉唱
 校長式辞
 卒業証書授与
 在校生送辞
 卒業生答辞
 まあ、これに卒業ソングが加わったのが定番の式次第だと思うが、全部生徒と先生だけで完結する。
 親はなくても式はできる。

 が、生徒だって一人の力でこの日を迎えたわけではないし、学校(先生)だって、保護者の協力があってここまでやってこれたのだから、子供の晴れ姿を見たいという親の気持ちは尊重すべきだろう。
 
 問題は来賓だ。
 これ、要らんだろう。いや、来てくれるのは有難いが、祝辞は要らん。誰も聞いてない。かえって式の雰囲気を壊す。
 あと、祝電披露もやめ。途中で転勤してしまった先生なんかはいいだろうが、議員とか業者のはどこかに貼っておけば十分。

 今回思わぬ形で、いつもと違う卒業式となったが、卒業式のあり方を考え直すいい機会となっただろう。
 来年はまた元に戻すというのではなく、この経験を生かし、生徒主役の心のこもった卒業式にしてもらいたい。

 ※冒頭写真は昨年度春日部共栄中学校卒業式(筆者撮影)