何度も言ってきたことだが、長期休校の影響をもう一度整理しておこう。
 まず、よく言われる学習進度の遅れであるが、学校単位で見ると、かなり差がついてしまったかもしれない。4月中や5月の早い段階で映像配信や双方向授業を実行に移した学校は、進度の遅れをある程度食い止められたが、取り組みが遅かった学校はかなり遅れをとってしまった。

 ただ、私は学校単位での進度の遅れは、それほど心配してない。夏休み短縮などによる今後の授業時間確保と、授業スピードの調節で何とかなる。

個人差の解消は無理かもしれない
 厄介なのは、休校期間中についてしまった個人差の解消、縮小だ。個人差は平時でもあるのだ。予習復習をする子としない子、課題や宿題をやって来る子と来ない子。
 授業というのは、できるだけ個人差が出ないように行われるわけで、ここで大差は生じない。個人差は学校外、授業外でついている。つまり、学校でつく差より家庭でつく差の方が大きい
 だが、ここを勘違いしている親が意外に多く、学校が始まれば遅れが取り戻されると思っている。取り戻されるのは全体の進度の遅れであって、家庭でついた差は学校では解消できない。これは学校や塾が責任を回避しているのではなく、事実そういうものなのだ。同じ時間に同じ先生が同じことを教えているのに差がつくとしたら、家庭でついている以外考えられないではないか。

コロナ不登校が増える可能性
 いま学校の先生が一番心配しているのは、頭の問題より、心と体の問題だろう。
 私は教員時代、夏休み明けはいつも心配でたまらなかった。「オラオラ、いつまでもお休み気分に浸ってるんじゃねえぞ」とか言いながら、全員を見渡す。目が合えばひと安心。だが、微妙に視線を逸らす子がいる。何かあったな。適当な理由をつけて呼んで話を聞くか。でもまあ、来てるんだからそれほど重症じゃないだろう。
 という具合で長期休業の後は、常にこういう問題が起きる。今回これだけ長い休みの後だから、学校に足が向かなくなってしまう子が出てしまうのではないかと、そこを心配している。

体力の回復が先決、行事も必要
 分散登校で週1回からというのは、非常にまだるっこしい気もする。再開するならもっとさっさとやらんかいと思うが、休校期間中の体力の衰えや生活習慣の乱れなどを勘案すれば、馴らし運転からというのは理にかなったやり方だと思う。

 行事は中止か延期という流れだと思うが、子供の実態を知らない政治家や役人の考え方だ。
 学校は厳しくも楽しいところでなくてはならない。授業が優先されるのは止むを得ないところだが、勉強だけだったら家で一人でもできる。みんなで何かをやれるのが学校のいいところである。行事は中止ではなく延期、あるいは縮小、簡素化して実施という方向で考えていただきたい。一見無駄で遠回りに見えるが、そのほうが勉強もはかどる。