アメリカは訴訟社会だと言われている。さまざまなトラブルを裁判によって解決しようとする傾向が強い。
 会社員だった四半世紀前、社命により、ある法律に関して最新情報を集めるためアメリカに行った。

 そのときに聞かされた話。
 わが国ではあらゆることが訴訟対象になる。
 たとえば、交通事故が起きれば、真っ先に駆け付けるのは警察でもなく救急車でもなく弁護士である。
 日本もいずれそうなるだろう。

 まあ、交通事故の例は半ば冗談であるが、弁護士が虎視眈々、訴訟ネタを探しているのは確かなようだ。

 では今日、日本で訴訟件数(民事)が激増しているかというと、実はそれほどでもない。
 やはり、話し合いで解決しようという日本的な風習は急には変わらないということか。
 ただし、弁護士の数は増えているから、弁護士一人あたりの訴訟件数は減っていると思われる。
 黙って待っていれば仕事が舞い降りてくるという状況ではないようだ。

 と、ここまでは前振りである。
 今日の本題は、「先生も法律を勉強しておこう」である。

 私は30代後半、教育に関わる法律はかなり勉強した(させられた)。
 管理職登用試験で主に問われるのは法知識である。
 結局途中で辞めたので実際に使う場面がなかったし、今ではすっかり忘れたが、振り返れば学んだこと自体は無駄ではなかった。

 当時の上司(教頭)が「歩く六法全書」みたいな人で、無茶苦茶法律に詳しかった。
 「学校で行われるすべての活動には必ず法的根拠がある」というのが口癖だった。
 日本は法治国家であるから、なるほどそうかもしれない。

 学校で起こるさまざまな事件やトラブル。
 そこまで行かないにしても、ちょっとしたもめごと。
 これらは、一見法律とは無関係に思えるが、関連する法や規則がどこかにある、必ずある。
 管理職がそれを知らずに判断し行動すれば、教職員はもちろん、児童生徒・保護者に不利益をもたらす。

 むろん、法や規則を知っているからといって正しい判断ができるとは限らない。
 だが、大きく間違った判断をしてしまう可能性は相当程度排除できる。
 というのが、当時の上司の言い分だった。

 つい最近、こんなニュースがあった。
 「財布1つ持ち去りで自主退学勧告は不当」 有名進学高校の元生徒が都を提訴
 「弁護士ドットコムニュース」に出ていたものだ。
 Yahoo!にも転載されたと思う。
 弁護士ドットコムとはこんな団体だ。
 
 弁護士の仕事を増やそうということらしい。
 まあ、それ自体は特に問題はないから、ここはスルーでいいとして、このニュースなどは学校側の温情が仇になったと思われる一件だ。

 まさか訴訟になるとは学校側も思っていなかったと思う。
 しかし、すべての行動、活動に法的根拠があるのだ。
 だから、裏を返せば、それを根拠に訴訟を起こすこともできるということになる。

 法律や規則に精通していて損することはない。